第一章3部〜ネコガリの猫
『森の奥の、小屋のすぐ近くです。行けばすぐに分かると思います。』
リフの言葉だけを頼りに、森を行ったジャックスとジル。
「なぁ、ジャックス。」
「何だ?」
「あの、リンとかいう弟、何なんだ?」
「何が。」
「俺たちが行くって言った途端、今にも泣き出しそうな顔しやがって。」
確かに。リンは、泣き出しそうな顔をしていた。
「関係ないさ。商売に私情は挿まない。」
「まあな。」
・・・・・・ダン!ダン!ダン!・・・・・・
ふいに、何かを打ち付ける音。
目の前には小屋。
ターゲットだ。
「どうだ、ジル。」
「におうぜ、こいつ。ぷんぷんだ。」
「それじゃあ、死んでもらうか。」
・・・・バァァァン・・・・
銃は命中。男は、倒れこんだ。
「おいおい、待てよ。こいつ・・・・」
「どうした?」
「こいつ・・・・最初から死んでたみたいだぜ。」
「何!?」
「最初から・・・・死んでいた?」
「こりゃあ、操体薬をやってらしいな。いや・・・もられていた、か。」
死体を、人為的に動かす薬。
つまり、この薬を飲ませて、この男を殺した人物がいるだろう。
ジャックスとジルは、ガーネット家に戻った。
「ジャックスさん!」
リフがかけよってきた。
「父は・・・・」
「死んだ。」
「お、おい!ジャックス!?」
「そうですか・・・・お礼といっては何ですが、今日もお泊りください。」
「ああ。」
「おいって!」
ジャックスはジルを無視して、階段を上り、昨日と同じ部屋に向かった。
当然、ポケットからジルが飛び出したとき、ジルは怒っていた。
「なんで薬のこと言わないんだよ!」
「犯人は分からないんだ。それに、可能性としてはリフが一番高い。」
「あいつからは薬の匂いはしないんだぜ?」
「そこが問題なんだ・・・・。」
リフに父親のことを詳しく聞こうと、部屋を出た途端――
・・・・バフッ・・・・
「うわっ・・・・」
リンがジャックスにぶつかった。
「あ、ご、ごめんなさい。」
「じ、ジャックス!」
「何だ?ジル。」
「こいつ、薬の匂いがする!」
「くすり?」
「ちょっと弟、口開けろ!」
「え、あ、はい。」
リンが口を開けると、ジルはそこに顔を近づけた。
リンが訝しげにジャックスを見やると、ジャックスは目をあわそうともしなかった。
「違う・・・・こいつじゃない。」
「・・・・と、なると・・・・犯人は、あいつだ。」
「はんにん?」
全く状況を把握していないリンは、首を傾げていた。
じゃらっと首の枷が音を鳴らす。
「おい、弟。」
「は、はい?」
「お前の父親は・・・死んだ。俺が行った時にはもう・・・・殺されていた。」
「えっ・・・・?」
「そういうことだ。弟!」
リフに話を聞く事をやめ、ジャックスとジルはもう一度部屋に戻った。
「なぁ、ジャックス。結論的にはそうだが、どうしても俺の鼻が納得しない。だって、リフからは薬の匂い、しないんだぜ?」
「ジル、周りをよくみろ。」
「周り?まわり・・・・まわり・・・・・」
「花だらけだ。」
「あっ!そういうことか。」
つまり、庭の花・室内の花の強烈な匂いによって、鼻を封じられていたのだ。
「化けの皮をはがす時が来たようだ。」
ジャックスはまた、銃に弾丸を込めた。
「リフ。」
「あっ、どうしたんですか?ジャックスさん。」
「はぁ、こいつ、俺たちが感付いたことにも気付かないわけか?」
「え?」
「お前、『gray』の一味だろう?薬のコントロールができているからな。」
「何の話ですか?」
「この期に及んでまだごまかすのかよ。」
ジルは面倒くさくなって、リフの元へ走っていった。
そして、くんくんと匂いをかぎ、一言。
「やっぱり、臭い。」
「っ・・・・!」
「そろそろ、正体、明かしたらどうだ?
「・・・・・ふん。ばれちゃあ、仕方ないですね。」
首にかけてあった緑色の宝石に触れると、ぱぁっとリフの体が光り、
次の瞬間、リフは別人へと変わっていた。
「私は、『gray』の一人。GREENといいます。」
「やはりな。」
耳も尻尾も髪の毛も、すべてが緑。
これが、『gray』の証拠。メンバーは、必ず名前と同じ色に染まっている。
「私を、どうしますか?」
「決まっている。・・・・・猫狩り、開始だ。」