第四章2部〜レンボの猫
町に着いた。
町の名は、キャル。
色宿や、酒場が羅列される、男のよりどころのようなところだ。
または、真っ当に生きられなくなった女の末路の町。
有名なのは、町の中とは対照的な、真っ白な教会。
セント・シャレンカ教会。
ガセルの残した子供達も、ここに引き取られているだろう。
「お兄さん、寄ってって〜。」
「いい思い、させてあげるわよ?」
町の中を歩くと、すぐに女が声をかけてくる。
ジャックスは、見向きもせず真っすぐ教会に向かっていった。
「あぁ!ジャックス兄ちゃんだ!」
「え?本当だ!!ジャックス兄ちゃーん!」
子供達がジャックスを囲む。
傍から見ると、子供をさらおうとしている男、にしか見えないが。
「え?え?な、何!?」
「ガセルと旅をしていた、子供達だ。」
「ああ!」
そういえば、子供達の声に、時おりガセルという名が聞こえてくる。
リンは、にこやかに子供達の頭を撫でていた。
「・・・ガキ・・・。」
「ジル?何か仰いましたか?」
「べっつに〜?」
「死んだ。」
リンとジルが会話をし、その会話を聞いていた子供達が笑っている中で、ジャックスのその言葉だけは、りんと響いていた。
「ふぇ・・・うえぇぇぇええん・・・・」
いっせいに子供達が泣き出す。
「な、何事ですかっ!?」
シスターらしき人が慌しく出てきて、子供達を連れて行った。
「汚れない御心を、汚すのはお止めなさい!賞金稼ぎのかたでしょう?」
賞金稼ぎは人殺し・・・・純粋な子供達に、いい影響を及ぼすとは考えられない。
「あなたも、その魂を清めてはいかがです?人殺しなど、悪魔の所業です。」
「神に・・・言われたといったら、どうします?」
ジャックスは自嘲するかのようにいう。
「何を仰っているんですか?神は、人をお救いになります。」
「神直々に、殺せといわれているんですよ。悪の首領を。」
「もういいですっ、帰ってください。」
シスターは、すぐに戻っていった。
「神なんて、存在しない。」
ジャックスが確かに呟いたその言葉を、リンもジルも聞き逃さなかった。
「さて、今夜の寝どころでも探すか?」
「そ、そうだね。できるだけ、安いところで。ね、ジャックス。」
「ああ。」
「2名様ですね。10000ギルーになります。」
「高い・・・・・」
ジャックスがため息をつきながら、お金を差し出した。
店員はニコニコしながら受け取り、部屋に案内した。
「ね、ね!ジャックス、なんか舞があるみたいだよ!」
「勝手に行ってこい・・・俺、興味ないし。」
「なんで?行こうよ!」
「リン、1人で行けばいいじゃねえか!」
「だってさ、僕可愛いから、変な人に目をつけられるかもしれないし・・・」
「ジル、ついて行け。」
「お、俺!?」
ジャックスは横になりながら、テレビを見ていた。
リンはまだジャックスと行くと息巻いているし、ジルは俺は行かない、といい続けている。
「うるさい・・・・。」
結局、リンとジルに引っ張られるようにして、ジャックスは舞を見に行くことになった。
会場に着くと、ジャックスはカウンターに座って、シャンパンを飲んでいた。
「ジャックス、ちゃんとみなよ。」
「嫌だ・・・くだらない。」
「ふん、もういいよ。ジル、行こっ。」
リンはいじけたように、前の方の席へと映っていった。
「・・・ったく・・・・。」
「お兄さん、1人?」
横から妙な女に放しかけられた。
化粧の匂いが鼻をつく。
「何か?」
「一緒に飲まない?」
「結構だ。」
「あら。グレイの薬、あげようかと思ったのに。」
「何!?」
ジャックスはがたっと椅子を蹴飛ばした。
女はふふっと微笑みながら、その姿を見つめている。
「聞きたくなぁい?私の話。」
「・・・・・話してもらおうか。」
ジャックスは、リンとジルを残したまま、店を出た。