第三章4部〜ネラワレル猫
「どうした?ジャックス。」
「ちょっと・・・リンを探してくる。」
「何で。」
「嫌な・・・予感がするんだ。」
ジャックスは、走り出していた。
おいっ、と後ろからジルが叫んでいたが、そんな声は届いていなかった。
もう・・・これ以上大切な人は失いたくない・・・・
脳裏に過ぎる、悲痛の思い出。
親、兄、そして・・・友人。
「失ってたまるかっ!!」
珍しく、声を荒げていた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「だいぶ、いい息づかいだね。」
「だいぶ、いい色にそまったね。」
銃が擦り、体のいたるところから血が滲んでいる。
内臓が痛い。
リンは立っているのもつらくなり、肩膝をついていた。
「ねぇ、白猫。」
「何・・・だ・・・よ・・・・・・」
「死ぬのって、怖い?」
「何言って・・・」
「ボクらはさぁ・・・」
「「二人でいられないほうがつらいんだ。」」
ブルーとレッドは、二人して見つめあい、うっとりした表情をした。
同じ顔の二人がそんな事をすると、気味が悪い。
「ねぇ、ブルー。」
「何?レッド。」
「そろそろさ・・・」
「うん、そろそろだね・・・・」
「「そろそろ、死んで?」」
・・・・・バァン!バァン!・・・・・・キンッ!キンッ!・・・・・
硬いものがぶつかり合う音。
「じ・・・ジャックス。」
「リン、平気か?」
「っっ・・・・!!」
リンは、ジャックスに飛びついた。
ジャックスは驚きのあまり力が抜け、そのまま倒れこんでしまった。
「こわかっ・・・怖かったよぉ・・・・・」
「守れないって・・・言っただろ?」
とまどいながらも、リンを慰めようと頭を撫でるジャックス。
必死にジャックスにしがみつくリン。
2人は本当の兄弟のようだった。
「飽きた。」
「飽きたよ。」
「帰ろうか?」
「帰ろう。」
ブルーとレッドは、勝手に事を終わらせて、背を向けていった。
「待てよ。」
「「なぁに?」」
「ブラックは・・・・何を考えているんだ。リンを襲わせて・・・」
ブルーとレッドは、にやぁっとまた気味の悪い笑みを浮べた。
「「さぁ?」」
そして、消えた。
それから、3分ぐらい沈黙が続き、それを破ったのは、ジャックスだった。
「ジルが、待ってるぞ。」
「・・・・買い物袋、落としてきちゃった・・・・」
「はぁ?てめぇ、泣けなしの金を・・・・んてことしてくれてんだよ!!」
「じ、ジル!?」
へへっと自慢げにたっていたジル。
その横には、保護者のように優しい笑みを浮べたゲーテが立っていた。
「帰ろうや。」
「ああ。」
リンとジルが、ふざけあいながら先に歩いていった。
時おりリンがふらつくと、ジルはちゃんと支えているようだ。
「なぁ、ジャックス。」
「何だ?」
「お前の過去・・・・話したほうがいいんじゃないのか?」
「・・・・・怖いんだ。情けないけど。」
「怖い?」
「俺が大切に思った奴は・・・みんな死んでいく。それが・・・ものすごく怖い。」
ジャックスが暗い、井戸の底を見つめたような声音で呟いた。
すると、背中をゲーテがばしっと叩く。
「ばーか、生きてりゃ皆死ぬんだよ。」
「そうだけど・・・・」
「俺は、生きてるだろ?現在進行形で、な。」
「・・・・ああ。嫌になるな。」
「またまたぁ〜、嬉しいくせに。」
ジャックスのなかで、何かが繋がった気がした。
「ジャックス〜〜ゲーテ〜〜!」
「置いてくぞ〜。」
「へいへい。元気だなぁ、子供は。」
ぱっとゲーテが手を差し出す。
ジャックスは、その手をとり、笑顔で言った。
「本当に、俺には眩しいよ。」