そして僕らは
いつものラーメン屋に食べに行こうというメールが入ったのは、ちょうど乗り換えのために電車から降りた時だった。春彦は自宅の最寄り駅を通り過ぎて、学校の最寄り駅まで出た。ラーメン屋に入ると、いつもの3人は既に席に座っていた。リナが手をあげて「こっちこっち」と叫ぶ。
「そんなに叫ばなくても聞こえるよ」
この店そんなに広くないんだし、という言葉はぐっと飲み込んだ。
「おっそいわよ!お腹ぺこぺこなんだから!!」
リナが上半身を前後に揺らしながら言った。
「遊園地、楽しかったか?」
レキの隣に座りながら訊くと、3人とも顔が曇った。
「どうした?」
「そんなにおもしろくなかった」
と答えたのは、ユウだった。
「なんかあったのか?」
「いやなにも。ただ、…春に4人で行った時の方が面白かった」
「…そうか」
目の前に置かれたお冷を一口飲んでから、レキは言った。
「今度は絶対参加するだろ?シオンもさ」
3人がこちらを見た。その真剣さに、春彦は苦笑した。
「…ああ、もちろん。いつでも誘ってくれ」
「絶対だからね!」
「だから、死ぬなよ」
ユウがぼそりと呟いて、他の3人は一瞬固まった。そしてそのあと、皆で笑った。
「残念ながら、まだまだ死ぬ予定はないよ」
春彦は笑いながら答えた。それを聞いて、他の3人は安堵したような溜息をついた。
「…もしかしてばれてたのか?」
「なにが」
「俺が今日、どこに行って何をしようとしてたのか」
「知らないな。言いたいか?」
春彦がかぶりを振ったのを見て、レキはほほ笑んだ。
「言いたくなったら言ってくれ」
「ねえ、注文しよ!私、モヤシラーメンとチャーハン!!」
「え?」
「んじゃー俺、そのセットにギョーザつけて!」
困惑する春彦をよそに、さっさと注文した二人はお冷を飲んでため息をついた。
「お前ら、そんなに食べられるのか?」
「もちろん。今日は奮発するんだよ!!」
春彦はユウの方を見た。ユウは澄ました顔で、窓の外を見ている。春彦はメニュー表に目をやってから、大きく息を吸い込んだ。
「モヤシラーメン。あと、お子様茶碗ください」
それを聞いたユウが、静かにほほ笑んだ。