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死にたい僕ら  作者: うわの空
エピローグ
34/34

そして僕らは

 いつものラーメン屋に食べに行こうというメールが入ったのは、ちょうど乗り換えのために電車から降りた時だった。春彦は自宅の最寄り駅を通り過ぎて、学校の最寄り駅まで出た。ラーメン屋に入ると、いつもの3人は既に席に座っていた。リナが手をあげて「こっちこっち」と叫ぶ。

「そんなに叫ばなくても聞こえるよ」

 この店そんなに広くないんだし、という言葉はぐっと飲み込んだ。

「おっそいわよ!お腹ぺこぺこなんだから!!」

 リナが上半身を前後に揺らしながら言った。

「遊園地、楽しかったか?」

 レキの隣に座りながら訊くと、3人とも顔が曇った。

「どうした?」

「そんなにおもしろくなかった」

 と答えたのは、ユウだった。

「なんかあったのか?」

「いやなにも。ただ、…春に4人で行った時の方が面白かった」

「…そうか」

 目の前に置かれたお冷を一口飲んでから、レキは言った。

「今度は絶対参加するだろ?シオンもさ」

 3人がこちらを見た。その真剣さに、春彦は苦笑した。

「…ああ、もちろん。いつでも誘ってくれ」

「絶対だからね!」

「だから、死ぬなよ」

 ユウがぼそりと呟いて、他の3人は一瞬固まった。そしてそのあと、皆で笑った。

「残念ながら、まだまだ死ぬ予定はないよ」

 春彦は笑いながら答えた。それを聞いて、他の3人は安堵したような溜息をついた。

「…もしかしてばれてたのか?」

「なにが」

「俺が今日、どこに行って何をしようとしてたのか」

「知らないな。言いたいか?」

 春彦がかぶりを振ったのを見て、レキはほほ笑んだ。

「言いたくなったら言ってくれ」


「ねえ、注文しよ!私、モヤシラーメンとチャーハン!!」

「え?」

「んじゃー俺、そのセットにギョーザつけて!」

 困惑する春彦をよそに、さっさと注文した二人はお冷を飲んでため息をついた。

「お前ら、そんなに食べられるのか?」

「もちろん。今日は奮発するんだよ!!」

 春彦はユウの方を見た。ユウは澄ました顔で、窓の外を見ている。春彦はメニュー表に目をやってから、大きく息を吸い込んだ。

「モヤシラーメン。あと、お子様茶碗ください」


 それを聞いたユウが、静かにほほ笑んだ。


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