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この行為がどれだけ間違えているか、どれだけ自分を傷付けているかなんて知ってる。どれだけ、自分のことを汚くしているのかも。
だけど耐えられない。一人は嫌。さみしいのは嫌。寒いのも、嫌。
本当はこんな行為よりも、あの子のくれたハンカチの方がよっぽど温かかったってことも知ってる。私のこれはただただ冷たくて、意味がない。身体を切るのと一緒。なのにすがりつく。
行為中の男の目は嫌い。冷たいから。モノを見る目。それも、汚いものを。私は眼をつむって、自分が一人じゃないことだけを確認する。ベッドのきしむ音がしてるその間だけは、私は絶対に一人じゃない。絶対に。
「お前さ、よくこんな子紹介してくれたな。結構かわいいじゃん」
男の一人が、金髪の男に声をかけた。金髪の男は私に電話をかけてきた相手で、いつも男を紹介してくれる。私はお金をもらって、あとは眼をつむっていればいい。本当はお金だっていらないけれど、お金を貰わなければ、私のこの行為はもっと理解されがたいものになるんだろうと思う。
独りじゃない時間がほしい。本当はそれだけ。
「まあ、でもこいつ、キズありですから。だから格安~」
金髪の男が意味ありげに笑った。こいつは、私の腕の傷のことを知っている。この男が最初に私の左腕を見た時の感想は、「気持ち悪い」だった。
「…今日は包帯巻いてきたから」
私はぼそりと呟いた。それを聞いて、長髪の男が勘付いたらしい。
「え、なに!?もしかしてこの女、腕切ってんの?」
その声と顔には、興味の色しかなかった。
「マジで!?なあちょっと見てみたいんだけど」
「あんまり見ない方がいいぞ。やる気うせるから」
金髪の忠告を聞かずに、長髪の男が無理やりカーディガンを脱がせる。その下から現れた包帯を見て、指をさして笑いながら包帯を取った。
汚いものを見る目。気持ち悪い物を見る目。憐れみの目。
私が、怪物になる瞬間。