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とある冒険者

「おっさんがスライムを食った」って話を聞いた時、とある冒険者は笑った。

冗談だと思ったし、酒の席の誇張だとも思った。


だが、乾燥だの燻製だの、妙に具体的な話が重なった。


本当に、食ってるんじゃないか。


そんな疑念が残った。


数日後、討伐帰りにコボルトの死体を見下ろしながら、ふと思った。

見た目は犬。

動きは獣。

人の言葉を真似るが、文明はない。


犬を食う文化があるなら、

これも理屈じゃ同じか?


空腹ではない。

食料も十分ある。

だからこそ、逃げ道があった。


それでも、やった。


皮と内臓は捨て、血を抜いた。

香草と塩を使い、焼いた。

考え始める前に火を通した。


食った。


味は、猪に近い。

硬いが、噛める。

臭みはあるが、不快ではない。


……思ったより、普通だな。


うまいとは言わない。

だが、まずいとも言えない。


食い終わったあと、しばらく火を見ていた。


食える。


その事実だけが、妙に重かった。


その時、とある冒険者は考えた。


スライムが食える。

コボルトも食える。


じゃあ――

モンスターって、食料になるんじゃないか?


それは答えじゃない。

ただの疑問だ。


だが一度浮かんだ疑問は、消えなかった。


全部じゃない。

食えないやつもいる。


それでも、

「食える側」が確実に存在する。


とある冒険者は、その夜、誰にも勧めなかった。

うまかったとも言わなかった。


ただ、酒場でこう言っただけだ。


食えたぞ。

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