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冒険者

火は、長くもたなかった。


拾い集めた燃えそうなものをくべても、

炎が上がる前に、ぱちぱちと音を立てて終わる。

焼くほどの力は、最初からなかった。


「……乾かすか」


そう決めてからは、迷わなかった。


スライムをできるだけ薄く削ぎ、

崩れない程度に引き延ばす。

火の跡に残った石は、まだ温かい。

そのそばに置き、距離を変えながら様子を見る。


焼ける気配はない。

泡も立たない。

ただ、水分だけが、じわじわ抜けていく。


半透明だったそれは、

時間と一緒に色を失い、

白く濁って、鈍い灰色になった。


指で触る。

ぬめりはない。

張り付かない。


少し曲げると、折れずに戻る。

乾ききってはいないが、

生でもない。


「……これで、いいだろ」


鼻を近づける。

刺激臭はない。

嫌な感じもしない。


舌先で、ほんの一瞬だけ触れる。

しびれない。

ピリつきもない。


小さく噛んで、すぐ吐き出す。

少し待つ。

口の中も、喉も、異常はない。


今度は、そのまま飲み込んだ。


水がないせいで、

喉を通る感触ははっきりしている。

だが、胃は静かだった。


もう一度、少しだけ齧る。

今度は、ゆっくり噛んだ。


噛んでいるうちに、

口の中に、遅れて味が出てくる。


強くはない。

だが、完全な無味でもない。

乾いたタンパク質を噛み締めた時の、

あの感じ。


「……するめ、だな」


思わず、そう口に出した。


水も塩も使っていないのに、

なぜか、しっくり来る。

噛めば噛むほど、

唾が出る。


うまいとは言えない。

だが、食い物だとは思えた。


もう一口、齧る。

ゆっくり、時間をかけて。


「……酒が欲しくなる味だ」


当然、あるわけがないのに、

そんなことを考えて、

おっさんは小さく息を吐いた。

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