地球にダンジョンができた
ああ、なんて美しい光景なのかしら。
崩れ落ちる魔王城。逃げ惑う魔族たち。
その中心で、ただ一人、剣を振るう勇者の背中。
「見なさい。これが、私が召喚した勇者よ」
私は玉座に座り、肘をついて頬杖をつきながら、その戦いを眺めていた。
勇者は疲れた様子もなく、呼吸一つ乱さず、魔王軍を切り伏せていく。
本来なら、魔王軍幹部は一人倒すだけでも国家が傾くほどの戦力。
それを、この勇者は――
「まとめて相手にしている、ですって?」
思わず笑みがこぼれる。
だって、強すぎるのだもの。
勇者は、私が呼び出した数多の魂の中でも、特別だった。
剣と魔法の素養だけではない。
思考速度、判断力、状況把握能力――どれも異常なほど高い。
「ふふ……やっぱり、あの世界から呼んだのは正解だったわね」
勇者の出身世界。
剣も魔法も存在しない、奇妙な文明。
けれど彼らは、弱さを前提に知恵と技術を積み重ねてきた。
だからこそ、この世界の力を与えた時――
こうなる。
魔王が咆哮を上げ、最後の魔力を解き放つ。
だが勇者は一歩も引かず、正面から受け止め、斬った。
終わりだ。
静寂。
魔王軍、壊滅。
「はぁ……最高」
私は深く満足の息をついた。
この勇者、強くて、かっこよくて、完璧すぎる。
――でも。
「ちょっと、面白くないわね」
一つの世界だけで、この力を終わらせるなんて。
この勇者が、別の世界に行ったらどうなるのかしら?
別の文明と比べたら?
ふと、あの世界が脳裏をよぎる。
勇者を生み出した、あの青い星。
「……地球、だったかしら」
いいわ。
次は、あそこを舞台にしましょう。
私の自慢の勇者と、
あの世界の人間たち。
どちらが、より面白いか――
比べてみるのも、悪くないわよね?




