エピローグ
「こうして、世界は神から人の時代へと移り変わり、彼女の刻印によって世界は自律性を手に入れた。もう、世界が真の神によって不安定になる恐れはない、少なくとも今のところは」
まるで一つの物語を読み終えた感覚に浸りながら、僕はページを閉じた。
「本当に、なぜあれで生きているのでしょう?」
道化が横から尋ねてきた。僕は彼が嫌いだ。
具体的には、彼の態度も、考え方も、何も面白くはないから。
「これでもミュリアが生まれるまで世界を何度もやり直してきたんだよ? そんな僕が、悪役に回ってまで危険を冒したのが本当に、“世界の安定性”なんていう応急処置だけだと思う? それなら、途中で辞めてたよ」
何か野心があるから、叶えたい願いがあるから人は前へと進むことができる。充足であれ、何であれ、現状維持ほど気が滅入るものはない。
「やっと、僕の刻印を破壊できたんだ。それに、使命もなくなった。ミュリアに感謝しないとね……まあ、お礼は後にしておくとして……やっと手に入れた“自由”なんだから、君になんて関わっていたくないんだけど?」
道化はわざとらしく肩をすくめた。
「一応、これからどうするのかを聞いておこうと思いまして」
「君の邪魔をするつもりはないよ。外に出るつもりだからね。僕は君みたいな、わざとらしく踊らされていることに嘆くやつが嫌いだ。そんな君に出会う事がしばらくないと思うと清々するよ」
「ですが、他の星系は既に消えてしまったのでは?」
僕は道化に振り返りもせずに口にした。
「なら、作ればいいでしょ。せっかく初心を取り戻したんだから、好きに生きていかないと」
何もない暗闇を進んでいくと、時々あの真の神のことを考える。
それは生まれたときから個であり全だった。
だから、自身が何者であるかを知ろうとした。
それは夢だった。
けれど、その夢は製作者の下から離れて歴史を生み出した。
その眩い光は神にとって、どれほど渇望していたものだったのだろうか?
つづく
暫く、閑話休題




