名を呼ばれ
視点:ミュリア
随分と、長い夢でも見ていたような……思いまぶたを開けると、目の前には涙をポロポロと流すナディアの顔があって、私は咄嗟にその頬を拭った。
「ごめんね、……心配させた?」
申し訳なさとそう思っていてほしいという気持ちの間で揺れ動きながらも、ナディアは返事をせずに私の背中に手を回して抱きしめた。
「そんなの当たり前だよ! 勝手に現れて、勝手に消えるなんてあたしは許さないからね……」
私はナディアを抱きしめ返しつつ、頭上で繰り広げられている戦いに目を向けた。
あの炎はシグルドだと、すぐに気づいた。
けれど、その戦い方はあまりにも多くのものを捨てている。
少し離れたところではエリンが結界の展開に集中して、こちらに気を配る余裕もないようだ。
「やっと舞台に人が揃いました。さて、ミュリア様、ここはこの“道化”が現状を説明しましょう」
少し驚きながら、事の詳細を聞いた。
「シグルドが考えたの?」
「ええ、私の下に来た時点で彼は主教様のことを把握して、対策を立てていましたので。その鍵は、唯一この世界に属さない貴方だけ」
随分と大雑把な作戦だと思う。
(そう……事の次第は私次第、こんな期待に応えないわけにはいかないわ♪)
本当は少しだけ心が躍っているのかもしれない。この先の行く末がどうなるかは誰にも分からない。
それでも良い方向へと進むと信じてくれた仲間たちの想いはとても嬉しい。
やり方は色々あるかもしれない。
例えば、私なら真の神の力を借りることもできるから、それで彼女を……現実のアーシャを消すことだって不可能じゃない。
(でも、それは私のやり方じゃないし……それに)
それはあまりに理不尽で、神の冷徹さと何ら変わりないと思う。
「だから、今ここに私の“刻印”を刻みましょう」




