遥か高き月の上から
ミュリアは遠くに見える青い星を眺めて、手を伸ばすがその間にある暗闇と静寂はあまりにも広い。
「ふうん、この星系は隔絶されてるみたい。どのくらいの歳月が流れれば、新たな文明の種が星に芽吹くのかは分からないけど、僕の時代には隣にこんな惑星はなかったよ」
アーシャは視線をさらに遠くにある宇宙の暗闇を見つめてそういった。
はぁ、というため息のあと、アーシャは疲れたように倒れ込む。
「正直、僕の体も限界に近づいてるんだよね。僕もデータで構成されてるから、余計に情報を得ると初期化されちゃって……だから、今まではあんまここまで立ち入ったりはしなかったんだけど」
それでも、やりきったようにふふっと笑う。
心配そうに覗き込む二人に気にしないで、というように。
「まあ、君たちが覚えてくれるのなら……僕がここで消えても無駄ではないってこと。僕の屍を越えていってよ」
ヴィネはアーシャを硬い地面から膝に乗せて、楽な姿勢にした。
「解決方法はないのですか?」
「知ってしまえば、後戻りはできないね。……しかも、今回ばかりは神の存在について詳しく考えてしまったのがいけなかったかな。所詮は、私は生命にも満たない過去の虚像。真実というのは往々として、自身を構成するものを破壊する行為に等しいだろう? データ体の僕には、あんまりそういった耐性というべきか……うーん、拠り所? 存在定義が崩されちゃうんだよね。アムリタでは人は死なない。だって、もう未来がないから。そんな場所よりも、やっぱりこういった生き死にに近い世界のほうが楽しいよ」
最後にどんな言葉を残すべきかと、アーシャは考えて、ヴィネの鍵が目についた。
「ああ、そうだ。何となくは心当たりがあったんだけど、君の製作者は多分、この星の出身じゃないかな?」
「そうなのですか?」
ヴィネは驚くことなく、何となく頭の中で回っていた歯車が徐々に埃を払って動き出すような感覚がしていた。
「サプライズにもならなそうだね。……見た感じ、僕の故郷と君の星以外の銀河は消失してる……本当ならここから観測できるはずなのにね。だから、ヴィネ。君があちらの星にたどり着くには、君たちが月というこの星から君たちの星以外に可能性はありえない」
「必要なら、たぶん残されたデータですべての記憶を復元できるけど、どうする?」




