一方その頃 その2
アクバーラは今日も太陽の下で活気に満ち溢れた人々が大通りを行き交っていた。清流が流れ、花々は瑞々しく咲き誇る。
そんな中で、シグルドは一人、暗い部屋の中で黙々と資料を読んでいた。
「よくそんなに読んでられるね……あたしだったら、途中で紙をくしゃくしゃにしているよ」
ナディアが部屋に顔を出すと、シグルドは苦笑を返した。
「僕に今できることはこの程度だ。できる限り彼女たちの痕跡を見つけて、その場所に駆けつけるしかない」
持ち運ばれたものはフィオルナが手配したミュリアたちに関する目撃情報だ。シグルドはその痕跡を丹念に確認した。
「……そこまで気負わなくてもいいんじゃない?」
それは今までのどの戦いよりも穏やかに見えるが、ナディアにはその胸中がどんなものよりも荒れ狂っていると感じていた。
「僕が彼女たちを攫わせてしまった。それは僕の責任だ」
シグルドはただ、その質問に何度も同じように答えていた。
「別に、あんたが攫わせたわけじゃないでしょ。悪いのは、その、よく分かんない教団のやつなんだからさ」
その慰めの言葉に、シグルドはしばらく沈黙した。
「……だとしても、不甲斐ないのは僕だ。その攫ったやつに責任を着せるわけにもいかないだろう」
はぁ、とナディアは仕方なく部屋から出た。
(……フィオルナ、あんたはあたしたちの結束力を心配してたけど、あたしからすればシグルドのほうが追い詰められてると思うんだけど……)
心の中で、あの尊大な女王様に不満を漏らす。
(もうっ、本当にどこをほっつき歩いてるの? 早く帰ってきてよ……)
心はずっと落ち着かない。
彼女たちが消えてしまったあの日から、何かを失ってしまったかのようにナディアはざわざわする感覚に戸惑っていた。




