禁忌の知識へ
ミュリアはアーシャからの問いに対して、誠実な答えを考えていた。
「……たぶん、その仮定は合ってるかもしれないけど、私にできることなんてほんの僅かよ」
躊躇わせていたのは少しの不安と一つの悩み。
「それが何なのか、私には分からなかった。その視線は常に人々の運命を見ていたんだと思う」
ミュリアにとって、それは夢に出てくるような記憶だった。頭も働かない暗闇で、たった一つの光を見ていた。
それは人々の生きた記録。
刻印を刻んできた者たちの永遠ともいえる長い長い旅路だった。
その旅路は常に別れを描いていた。
それは家族を奪われたり、世界から去ったりといった生きている上で起きうる悲劇。
そういった者の中にある誰かへの献身。
悲劇とはいつだって、愛と共にある。
「時折、思い返すように夢に見るの。当時は心揺さぶられるばかりで、何も分からなかった。けれど、今は……彼らの思いに共感し、大切に思えるの」
それがミュリアがこれまでの旅で育んできた心。
「そして、それは神へと捧げる供物ともなる」
それを神が欲してやまないのだと、本能が知っている。なぜなら、そういった愛を神が持っていることを知っているから。
「私は一部の心を対価に、知識を得た。ただそれだけよ」




