夢か幻か
破滅や滅亡は泡みたいなもの。
平和や日常なんてものは膨らんだシャボン玉みたいに空中へと向かっていく。
風に揺られて、それこそが当然というように太陽の光に照らされる。
でも、それが生まれたときから割れるという結果に向かっている。
高く飛べば飛ぶほどに、死に吸い寄せられて、安定性は失われて弾けてしまう。
結局のところ、日常という名のシャボン玉は何もない空中に霧散する。
そう、それはアムリタという文明が至った結末と同じだ。
「人々は神秘を明かそうとして、触れたのは果てしない深淵だった」
アーシャが見つめるデータはその滅亡をありのままに映し出した。
崩壊する身体、奪われていく酸素、周囲にある建物も砂のようにサラサラと消えてしまう。
「それは予告されたものだったのか、誰にも分からない。ただ、突然破滅という形で突きつけられた。彼らは不幸だよね。ただ生きていただけなのに、全てを否定されたようなものだから」
人はよく言うだろう。
日常の破綻は突然のものだと。
けれど、それは確実に喉元まで近づいていたはずだ。
「無知は罪、無知は美徳……果たしてどちらが正解なんだろう? これも主観でしかない。まあ、結局彼らは何も分からずに消えてしまったんだけど」
苦しみの意味を知っていれば楽になるだろうか?
苦しみを負うという帰結に変わりはないのに。
人々は空を仰ぎ見る。
そこにあるのは暗闇に浮かぶ一つの視線。
微睡んだように無関心で無感動、ただそこから放たれる冷徹な視線だけが彼らを包み込んだ。
……虚無に向かって。
「神か、なんて身勝手な存在だろう。僕たちを生み出しておきながら、僕たちをただの夢や幻としてしか捉えられないなんてね」
夢幻泡影、神にとって僕らの世界はそんな淡いものに過ぎない。
「だから、僕らは君の視線に晒されてしまうと何もない場所へと帰ってしまう。神にとっては僕らの存在は実在しないんだからね」
ニセモノはどこまでいってもニセモノだ。
その事実自体は否定できない。
「アハハハッ」
アーシャは自嘲するように笑った。
「……なるほどね、となると答え合わせをしたいな」
アーシャにとって、何かが壊れることなど気にすることではない。だから、気になったのなら躊躇わずにすることにしている。
それが他者の秘密を暴くことであっても。
「ねえ、ミュリア。君は秘密を明かせないと言った」
そもそも、他者の返事を待つつもりもない。
「でも、今、ここにおいては君に問いたださないといけない」
この世界がただの神の想像物であるなら、なんて人生というものは滑稽な悲喜劇なのだろう。
(僕は儚いものよりも、確かなものを掴みたい)
アーシャは興奮した様子を隠して、驚くミュリアにゆっくりと近づく。
「アウルバスで、君は学者たちの集合体である怪物を偽神と呼んだ。そして、その仮説は成功した……」
けれど、その瞳はぎらぎらと輝いている。
「でも、そういったことは仕組みを理解してないと思いつかない。例えば、本物の神にあったことがあるだとか……」
友だちへの態度ではないと分かっていても、それを選ぶことに後悔はない。
「君自身が、神の一部だとか……ね?」




