破滅を刻んだ荒廃なる大地へと向かって
かつて栄達した文明があった。
けれど、人々の欲望がそこで満足することはない。
人々は考えた。
神の下にたどり着けたのなら、それは人間にできる最高の栄誉ではないか、と。
けれど、その結果は何よりも悲惨だった。
僕たちは結局のところ、神にとって何の価値もない。
いや、こういうべきだろう。
所詮、僕たちは泡沫の存在でしかないのだと。
ヴィネは一つの記録を眺めて、長い沈黙をしていた。
「おーい、大丈夫?」
アーシャが声を掛けると、ヴィネははっとして振り向く。
三人は古骸の遺跡を探索して、埋もれたデータから隠された歴史を探していた。
「疲れてるなら休んだほうがいいよ? 君を修復する方法はないんだから、壊れでもしたら大変だ」
「……大丈夫です。それよりも、この場所にアムリタの滅亡した歴史が残されているのですか?」
「実際のところ、そんなデータは誰も見たくないだろうし、必要に感じる人も少ないから。誰だって、つらい現実を見たくないでしょ。それと同じ」
ヴィネは再びデータの抽出を始めた。
中にあるのは見知らぬ他人の日常的な記録しかない。
「やっぱり、表に出すほど不用意じゃないのかな。遺跡の奥を調べに行く?」
アーシャが別の方向で道具を取り出してデータを見ていたミュリアに声を掛ける。
「確かにそうね。ヴィネは行ける?」
「はい、二人が行くのであれば」
古骸の遺跡は長方形の建物が地面に崩れ、そこから蔦や苔が生えている。人の気配はなく、かといって動物の気配もない。ただの背景、残された余り物だけで構成された空間に、生命なんて活気はどこにも見当たらない。
「そういえば、アーシャは何で探索を始めたの?」
ミュリアが聞くと、アーシャはあははと軽く笑って答えた。
「アムリタにいる気分じゃないからかな。あそこの人たち、下手な機械よりも無機質なんだ。それを相手にして楽しいと思う?」
「じゃあ、古いデータは楽しいものなの?」
「暇つぶし程度にはね。僕は別に頓着するタイプじゃないから、どんなものを見ても新しいものなら良いなって思うよ。正直、アムリタが滅亡した時の記憶はないから、その時僕が何をしていたのか気になるんだ。もしかしたら、そっちが本命かもしれない」
軽く笑っているアーシャに、ヴィネは疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「その滅亡ってどのようなもの、だったのですか?」
「原因を聞いても、誰も教えてくれないんだよね。でも、その時のことなら集めたデータで少しだけ話せるよ」
「簡単にいえば、生きている人間はほぼ全て一瞬で影も形もなく溶けちゃったんだ。ああ、誤解しないで。グロいとかそういうのじゃなくて、本当に痕跡もなく消えちゃったんだ」
「そんなこと、突然起こるのかしら?」
どんな兵器であっても、何かしらの痕跡は残る。ましてや、世界から消滅したとすれば、それは人の手によるものといえるのだろうか?
「不思議だよね。だから気になる。一部の人はデータ空間に逃げ込んで難を逃れたけど、誰も当時のことを思い出そうとはしない。まあ、そんなことがあったからミュリアの話を聞いてもそこまで驚くことでもないかな〜って」
「ま、僕はその時奇跡的に遭遇せずに逃げ込んだって可能性のほうが高そうだけどさ」
僕って幸運だから〜と、アーシャは適当に言った。
「その時のことを記録したデータの中に入れれば、そこを起点に外部と接続できるかもしれない。ここは密閉された空間だから」
三人の前に閉ざされた扉が現れる。
「いつだって、真実を知ることができるのは現実を受け入れた人だけ。さあ、僕たちで真実へと立ち入ろう!」




