遙か遠き彼の地にて
ヴィネが目を覚ますと、ミュリアが横ですーすーと寝息を立てて寝ていた。
その様子を見て、ヴィネは現状が悲観的なものでないと認識できた。その安心感が何処から来るのか、その答えも考えないままに、壊された腕を持ち上げる。
(……ナディアは大丈夫でしょうか?)
他の仲間たちの事を考えながら、無意識のうちに視線が部屋の天井へと向かう。
(……ここは?)
木でもなければ石でもない、けれどヴィネにとってこういった“構造”に見覚えがあった。
『ヴィネ〜、コーヒーお願い』
(?)
視界が揺れ動く。
まるで何かをきっかけにして記憶の蓋が取れたように、大切な存在だったと感じる何かの幻覚が浮かび上がる。
『困ったなぁ。備蓄は少ないし、エネルギーも枯渇気味……外の世界を知ることができたら、手の打ちようもあるんだけど』
それは独り言を呟いた。
『ヴィネ! そんなぼろぼろになって、一体どこへ行ってたの?!』
心配そうな声が脳裏に響く。
『もう、私たち二人だけなら、最期まで一緒だよね?』
(……悲しい記憶ですね)
それがかつての記憶だとしても、ヴィネにはあまり実感蛾なかった。
あの時にあったかつての自分とヴィネはあまりにも違う。
ヴィネには心が分からない。
それは悲しみという論理として理解していても、同情したり共感したりといった出力はされない。
(ミュリアになら、分かるのでしょうか?)
ヴィネにとって、ミュリアは手本となる存在といえるかもしれない。その中に、多少の秘密があったとしても、それが決して誰かの危害になるようなことではないと知っている。
それはナディアとは違った形の、純粋な優しさだ。
(明日、聞いてみましょう)




