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偽神〜every night Memories〜  作者: 徘徊猫
第一章 血の杯を掲げよ、狂乱に酔いしれて悲哀を聞け

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数多の犠牲に必ずや報いを果たさん

 クレイトスが抜いた剣が国王の腹を貫く。しかし、接触部から黄金の液体が滴り落ち、肉体の構築を続けながらも剣を絡め取ろうとする。

 クレイトスは剣を捨て、距離を取って空中に氷塊を生成して叩きつけた。砂煙が視界を覆い隠し、その中から幾つもの黄金の矢じりが飛来する。氷の壁がそれを遮るが、その隙に国王はクレイトスから奪った剣で背後から一撃を放つ。

 金属の音が響き、クレイトスの籠手が剣を防いだ。そして国王と同じように籠手から離れないように剣を籠手ごと凍らせて至近距離から氷の力を込めた拳を放つ。

 国王は口から黄金の液体を流しながらも、笑みを浮かべた。その直後、国王は自身の背後から黄金の槍を生成し、クレイトスの胴体と共に貫いた。

 「ぐっ──」

 国王は片手に黄金の呪いを込めてクレイトスへと手を伸ばすが、頭上から氷塊を落として距離を取った。


 クレイトスは膝をつき、籠手で取り戻した剣をもう一度握り締める。周囲の壁は壊れた瞬間から黄金で継がれているが、ほとんど原型は残されていない。

 クレイトスは満身創痍の状態ながらも目の前で倒れる国王の下へと向かった。剣を地面に引き摺り、断頭台へと送る処刑人のように前へと進む。


 その時、ミュリアとフィオルナが玉座まで辿り着いた。

 「……お前たちの勝ちだ、戴冠するといいフィオルナよ」

 そこにいるのは玉座に座る王ではなく、敗れて全てを失った男だ。

 「だが、一つだけ聞こう。お前はなぜ王冠を望む?」

 フィオルナはただ淡々と答える。

 「全てを変えるためだ。黄金の栄誉など、そんな不確かなものではなく自らの手で確かなものを築くために」

 「ふん、結局俺たちは何も変わらない……ただ巡り合わせが来たというだけか」

 国王は黄金の力を失って崩落した天井を見つめる。その先に広がる夜空は何処までも暗く深い。

 「黄金の刻印が描く未来は永遠を約束するのでしょう。けれど、それは生きているといえるの? 私たちはただ生きているわけじゃない。秩序は必要かもしれないけれど、それは黄金の庇護じゃない。だって、そこには黄金から分かれた道しかないから。きっと、私たちはこれからも抗い続けるのかもしれない。それは運命であったり、社会であるかもしれない。あなたの方法は優しいけれど、一部の種から芽が出ることを摘み取る行為でもある。そこから芽吹く花たちも、きっと世界を彩るでしょう。黄金だけでなく、もっと眩くて温かなものが」

 「お前は、あの英雄の付き人か……。ふっ、慰めなど要らぬさ。俺はたとえ他の花を踏みにじるとしても、これ以上失いたくなかった。それだけなのだから」

 その目はもう霞んだ世界しか見ていないのだろう。或いは彼の幻想であるかもしれない。

 「ミュリア、ここから先は見なくていい。お前はただの旅人なのだから」

 フィオルナは視線を前から逸らさずに言う様子を見て、ミュリアは胸の前で手を握りしめた。

 「……だとしても、私はこの結末を見届けるわ」


 「いつまでも、その輝きが消えないことを願う……」 

 「さらばだ、ファラオス」


 静寂が玉座を支配した。黄金の刻印はなくなり、荒れた動乱に終止符が打たれたかのように。

 けれど、その静寂もすぐに打ち破られた。

 どこからともなく手を叩く音が聞こえてくる。暗闇から一人の男が現れた。

 「皆様、お疲れのところ申し訳ないのですが、ここで終わりだと思ってはいませんか?」

 「お前は誰だ?」

 フィオルナはナイフを男に向ける。

 「私のことは“道化”とでも呼んでください。ああ、私にあなたたちに危害を加える意志はありません。ただ、お忘れでしょうがまだ禍根は残っている。この国の本当の闇は地下に残されたまま」

 道化が語っている間に地面から凄まじい音が聞こえる。そして玉座を貫通して1本の枝が王城を覆う。

 「ここで知らせに来なければ、あなたたちは事情も知らぬままあれに襲われていたでしょう。既にぼろぼろの将軍と消耗した王女と……ともかく、一つだけ神の名の下にお教えしましょう。黄金の巨木、過去の遺産を根絶やしにしなければ国は滅びます」


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