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偽神〜every night Memories〜  作者: 徘徊猫
第一章 血の杯を掲げよ、狂乱に酔いしれて悲哀を聞け

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黄金の果実と聖餐

 四人は底に見えない暗闇へと進んでいく。

 「出口は下にあるのか?」

 「考えても見ろ、設計上ここを黄金で満たすのなら出入り口は一方通行の方が良い。特に、時間の経過で辿り着く頃にはすぐ進めなくなる下方のほうが何かと都合がいい」

 ナディアの尽力により、まだ黄金は細い溝を流れる程度だ。

 「見ろ、あれが出口だろう」

 目の前には固く閉ざされた鉄の扉が閉じられていた。

 「この先は城の深奥と繋がっている。つまりは、国王が今まで隠していたこの国の秘密を知ることができるというわけだ。どちらにしろ、ろくでもないものだろうが」

 強固な扉にクレイトスが手を伸ばすと内側からすんなりと開錠した。

 「それが将軍の刻印の力なのかい?」

 「そうだな。……俺のことは好きに呼べ、今はただの個人としてここに立っている」


 扉の先を進んでいくと煌びやかな光りに包まれた空間に繋がっていた、

その中心で大きな黄金の木が一本伸びている。

 「お前たちは知らないだろうが、この国の成り立ちは黄金の刻印が関係している」

 フィオルナは黄金の巨木にナイフを突き立てると外皮から赤い液体が滴り落ちる。

 「黄金の力は養分さえあれば若さすらも与えるものだ。私は十年程度だが、あの老いない国王を見てきた。多くの者が噂していたよ、国王は外道に手を染めていると」

 滴り落ちた赤い雫に木の根が蠢き絡みつく。本能的に血に植えているようだ。

 「最近、幼い竜の密輸が目立つようになった。何のためかは察しが付くが、黄金の養分にしたんだろう。大人ではここまで運べない。加えて表で明らかになればそこの将軍が動くからな。これこそが歴代国王の罪であり、見繕った栄誉から剥がれ落ちた永遠への渇望だ」

 フィオルナが刻印を出そうとすると、それに引きつけられて金の根がフィオルナの首を狙う。中断すると、徐々に引いていった。

 「流石にこのままでは貯水池に火をつけるようなものか……」


 黄金の巨木から離れた場所で四人はひとまず休憩した。ミュリアはちょうどフィオルナと二人きりになったときに話しかけた。

 「要するに、国王は多くの命を生贄にして永遠の王朝を築こうとしているの?」

「そうだな、国の統治者がいつまでも君臨し続けるのなら安泰という算段なのだろう。そのために邪魔なものは処分する。黄金の輝きに不純物は要らないからな」

 衝撃的な事実を目にしてもフィオルナには興味がないようだった。

 「一番気になってたのだけど、貴方は国王のやり方をどう思うの? こんな残虐なやり方を知っても、あなたは玉座に付くこと以外考えていないように見えるわ」

 「一定のところは認めている。あれの手腕も力も一級品で、計画が叶うならば長い繁栄を約束できるだろう。私との利害は玉座しかない。残虐であっても、あれは国民に幸福を与えると思うぞ。全てを眩い黄金の中でひた隠しにしてな」

 「じゃあ、あなたの国はどんなところなの?」

 「私なら戦士の国をあるべき姿へと戻すだろう。即ち、黄金による支配ではなく圧倒的武力による統治だ。ただ私の臣下として武器を振るい、この国の名を世界に知らしめよう」

 「あなたは何かを為すには犠牲がつきものだといったわよね。でも、戦いだけが統治の全てではないんじゃないかしら」

 「結局のところ、この国は戦士の国だということを忘れるな。戦士の栄誉は何処で手に入れる? 闘技大会など余興でしかない。彼らは戦うものとして刻印をその身に刻んだ者たちだ。武器は振るわれなければ価値を示せない」

 「そんなことないわ。確かに多くの人たちは戦いに興奮しているかもしれない。けれど、戦いが人を作るわけじゃない。刻印を持つ人たちも、運命の試練に身を置いているけど、それは故郷のためだったり、大事な何かを守るためでもある。その人たちはきっと、世界の片隅であっても小さな幸せを精一杯輝かせているの」

 「私を説得するな。お前の言葉を否定するつもりはないが、お前のような意思も国から見れば小さなさざ波に過ぎないのだから。お前の言葉は受け取るが、だからといって選択を委ねるつもりはない。いつだって、どう進むのかは私が決めるのだから」


 反対で、シグルドとクレイトスは今後の動きについて話をしていた。

 「僕は黄金の刻印について詳しくない。だから。教えてくれないか?」

 「何が聞きたい?」

 「今までの感じたと黄金の刻印から生まれたものに触れると駄目みたいだけど、国王はどんなふうに黄金を使うんだい?」

 「恐らくだが、今回は質量で呑み込んでくるだろうな。戦場でなら槍や剣を生成して敵を貫くというものだったが……ここはあいつの領域だ。俺が今で見てきたものよりも高い脅威と捉えたほうがいい。特にあいつは頭が回るからな。不意打ちを食らえば、すぐにでも黄金の呪いが身体を駆け巡るだろう。できればこちらから仕掛けたいものだが……」

 「その口ぶりからして、国王とは長い付き合いなのか?」

 「気にするな、俺はあいつを敵と見定めた。あいつが戦士の栄誉を泥に捨て、欲望に沈んでいくというのなら俺が引導を渡してやる。……お前は死んだ身近な者の夢を見るか?」

 「……ああ、そういうものは頭から離れないだろう」

 「俺の友はみな、戦場で命を落とした。他ならぬ、あいつの命令で。だというのに、あいつはその栄誉すらも踏み躙ろうとしている。永遠の黄金郷……それは煌びやかな世界だが、その世界に傷を負った者たちの居場所はない。暗い世界で忘れられていくのだ。故に、俺は最後まで暗闇を守ると決めた。その葬列に親友が一人加わることになろうとも、死者の期待を裏切ったあいつに対価を必ず払わせる」


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