お前もっと体力つけろよな
一方その頃…
希夢は青井を連れて家の中心部に向かっていた
「あ、兄貴…速すぎますって…ゼエゼエ…」
猛スピードで走る希夢に手を掴まれている青井は息を切らしていた。社会人になってからろくに動いていなかったため、足が上がらず、ほぼ希夢に引きずられているようになっていた。
ようやく部屋に着くと襖を勢いよく開け、部屋の中を見回し、透明なカバーが被せられて、黄色と黒で縁取りされている大きな赤いボタンを見つけた。すぐにボタンを押すと、家中にサイレンの音と赤いランプが点滅された。すると家中が騒ぎ出したので、希夢は近くにあったマイクで放送をかけた。
「敵襲、敵襲、現在当主代理として来夢からの指示を受け、防衛陣を発動させた。戦闘員は確認に向かい報告し、非戦闘員は直ちに避難せよ。繰り返す…」
希夢は各員に伝わるように10回程放送をすると、使用人が部屋に入ってきた。
「失礼します!戦闘員からの伝達によると敵の数はおよそ20、階級は『大総裁』、『総裁』、『騎士』と見られます。」
悪魔の階級は14に分けられており、確認されているのはその中でも低い3つの階級の悪魔たちだった。今までの記録からして、『大総裁』1体に対し、戦闘員を1人当てても無傷で済むことが半数を占めているため、希夢は人手は十分だと考えた。
「わかった、今いる戦闘員のみで対処可能とし、俺は客人の対応にあたる。それに伴い、ここの対応をお前に任せたい。」
「かしこまりました、ここはお任せください」
「頼んだぞ。よし、青井!あいつらのとこ行くぞ」
「え…?はい、わかりました…」
まださっきの走ったときの疲れが残っている青井は、肩で息をしながら膝を床につけていた。青井の体力の無さに呆れた希夢はやれやれと言いたげに肩を落とした。このままではあちらに着くのがどんどん遅くなってしまうので、青井を右手で持ち上げると、小脇に抱えて走り出した。
「ちょっと緑谷…いや希夢さん!僕結構重いんですから降ろしてくださいよ!自分で走れますから!」
「自分の現状を理解しろ、もっと体力つけてからそういうことは言え」
走りながら冷静に言うと、青井は希夢のほうを向きながらクーンと言いたげな表情を向けていた。成人男性の上目遣いにぶりっ子ポーズは流石に刺さったようで希夢は青ざめた顔になった。
そんなこんなしていると希夢の友人が待機していた部屋についた。結構なスピードを出していた希夢は、足から車がブレーキを踏んだような音を出しながら止まった。
「確かここにいたはずだが、流石に避難したか?」
「でもあいつらのことですし、面白がって避難よりも外に出て、危険に向かって行ってるかもしれませんね…笑」
半分諦めた感じになった2人はとりあえず確認はしておこうということで、部屋の襖を開けた。すると開けた瞬間に何かが頭に向かって降ってきていることがわかった。
希夢は持ち前の瞬発力で後ろに下がった
しかし、青井は重たい体を動かすことを数年忘れていた人だったので、その物体を避けることは出来ず、頭に重い一撃を食らってしまった。




