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とーしゅだいりさまー

 チョップを食らった『青井』さんは頭を押さえて、痛みに悶えながらジタバタした。不覚にも少し面白くて僕は手で口元を隠しながらくすりと笑った。



「てか、お前なにしにきてんだよ。大広間から出るなって言ったのに、『黒澤』もお前もなんでそうほいほいでていくんだろうなぁ?」


「いや!僕はこんなにも遠出するつもりなかったんですよ!?ただちょっと煙草たばこを吸いたくなってしまったもんで、喫煙所を探してたんすよ…笑」



 『青井』さんはかなりヘビースモーカーのようで着ているスーツには煙草たばこの匂いがこびり付いていて、そこからほのかに女物の甘ったるくてキツイ香水の匂いもした。女しか興味がないっていうのも嘘じゃないだろう。



「はあ…うちに喫煙所きつえんじょはないんだよ、仕方ないから外で吸えよ。あと火の始末はちゃんとやれ」


「はぁい!もちろんですって〜♪

あ…、あのー『緑谷』さん…?灰皿ってないっすか…?」



 そう言われるとお兄ちゃんは深くため息をつきながら、自分の顔を右手で覆うとゆっくりその手を下へ流した。



「ちょっとこっちこい」



 お兄ちゃんはそう言うと少し歩き、2つ先の部屋のふすまを開けた。中にある木製の棚の引き出しを開け、ガサゴソと探るとお目当ての灰皿を見つけた。



「ほら、これ使え」


「おお…!ありがとうございます…」バン…!!!!



 『青井』さんに向かって投げ出された灰皿は窓からいきなり撃たれた銃弾をかすって、床に転げ落ちた。



「伏せて!!!」



あまりのことに意識が遠くにいっていたお兄ちゃんは僕の声でハッとなったが、『青井』さんは状況に理解出来ず、僕が彼の肩を触り床に体を付けさせた。


バン!バン!バン!と何度も僕たちの上を銃弾が通り過ぎていき、襖は破れてその役割を果たさなくなった

こういうときに悲鳴の1つでも上げられたら、可愛い女の子になれるのだろう。冷静になってしまう自分自身に少し畏怖した。



「現在、食満家当主が不在のため、次期当主である僕が当主代理として指揮をとります。希夢のぞむは青井さんを連れて避難、防衛陣の発動を任せます、僕はここに残って敵を撃退、もしくは足止めをします。」


「待ってくれよ!でもそれじゃあ来夢らいむはどうするんだ」

「そうっすよ!女の子1人残して行けないですって!」



 2人の言うことは確かに正しい。こんな非力な腕の僕に後は任せた。なんて言えるはずもないに決まっている。僕は少し長く息を吸って、吐いて、2人の方を向いた。


「狙いは僕じゃなくて2人です。これが一番の合理的な判断であり、この場で一番の権力者の命令になります。

分かったのなら、さっさと行ってください。時間が惜しい。」


 そう冷静に言うとお兄ちゃんは苦虫を噛んだような顔になり、青井さんは拾った灰皿を持って僕とお兄ちゃんの顔を交互に見ている。


 一息ついたお兄ちゃんは顔に変えた。



「かしこまりました。この希夢のぞむ、当主代理の命令をしかと受け取りました。ご武運を。」


 お兄ちゃんは青井さんの首根っこを掴んで、家の中心部までダッシュで走っていった。暫くして音が小さくなると、僕は撃たれていた方の襖を勢いよく開け、辺りを確認した。



「ふぅ〜…いっちょやりますか。『吐き戻し』発動」


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