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ウマ野郎 アグリーダービー

「茶野さん…良くなるよね?大丈夫…よね?」



 不安をその身に抑え、来夢は歩く。水仕事をせず育った陶器のような指が、壁を伝って線を描いていた。


 ぐぅ~…


 来夢の腹から夕飯を伝える時計の音が聞こえた。誰も近くにはいないが、なんだか少し恥ずかしくなってしまった。



「今日は、何を食べよう。」



 思い立ったら即行動。来夢は調理場チョベリバに足を運んだ。近くなってくると、誰かが声を荒げている音が聞こえた。



「行くのよぉ!!ブレッドシャワー!!!♡」


「逃げ切ってよ!ミホノヴァロワ!!♪」


「マチカネヴァルトブルたん、かーい〜」



 その声は『プリンセスシリーズ』のマダムレンズ、ミスベル、アリッサだった。何やらスマホに向かって、声を高らかに上げていた。なにしてるんだろう50%、うちの子かわいい50%が来夢の脳内を支配していた。



「みんななにしてるの?」


「「「リトルマザー!?」」」


「おかえりなさいませ。ベルたちは…その…♪」


「今、結構人気のゲーム『ウマ野郎』をやっていましたわぁ♡」


「マチカネヴァルトブルたん、かぁーい〜♡」



 そう言って3人はスマホを来夢に見せつけた。画面にはそれぞれの推しがホームに佇んでいた。

 来夢はスマホの液晶に触れる。操作するわけでなく、ただその存在を知るように籠もった熱を感じていた。



「教えてくれてありがと。僕もやってみたいけど、スマホないからみんなの輪に入れないや…」


「リトルマザーってお持ちになっていないんですの…?」


「うん、今はこれだけよ。」



 ポケットからかなり年季の入った青いガラケーが出てきた。できるゲームといったら「おば●ちゃん●飛ぶ」といったほどだろう。あまりの出来事に3人は息を呑んだ。



「…あんの馬鹿天使!リトルマザーの実の父でありながら、大事な大事で大事すぎて大事が大事を大事にするリトルマザーに、まだスマホを買っていないなんて!♪」


「今どきの方がガラケーを使っているのは、蘭ねー●ゃんだけだと思ってましたわぁ♡…それはそれとして旦那さまにはあとで一発入れてやりましょう。」


「マチカネヴァルトブルたん、かぁーい〜♡」



 マダムレンズとミスベルの迫力で、来夢はピョピョピョってなった。自覚したらその途端に腹が痛くなってくるように、自分が周りから少し遅れていること自覚した。

 なんだか嫉妬している訳でも怒りが込み上げてくる訳でもないんだけど、なんだか自分だけが世界に取り残されている気がしてしまった。心臓の奥が締まって、一瞬笑顔が崩れてしまう。



「マチカネヴァルトブルたん、かぁーい〜?」


「うん、かぁーい〜よ」


【本日のグリストーリー】

 来夢たちが住んでいる食満邸には、招待されない限り入ることはできない。昔から日本にある為、食満邸は日本式だが、不在中の現当主夫人『リズ』が嫁入りしたことで所々が欧米化している。

 家の中では着物と決まっているので、一族の者たちは好きな色の着物に必ず白の羽織物を着ている。

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