万年筆の吸入方法
青黒く光るインクの海に美しい彫刻が施された銀のペン先のような靴が浸かっている。片方だけが輝いているので、黒澤はその姿を片方だけガラスの靴を置いてきてしまったシンデレラのようだと思った。ちぎれた脚と万年筆を繋いでいる金具が高速で回り、それらはすべて吸入される。
入れ終わると茶野は左脚を天に向かって高く上げた。数秒停止したと思うと、膝部分が曲がって、また金具が回り始める。今度はゆっくり…ゆっくり回り、ペン先からぷっくりとインクが現れる。そのインクは震えると、耐えきれず重量に従って地面に落ちた。次の瞬間、アームストロングの目の前には、踵落としを決めそうな茶野がいた。
「クソ…!!!」
間一髪のところで避けるが、振り落とされると同時に溢れ出るインクがアームストロングにベッタリこびりついた。
茶野はまるで単独ジャンプを決めた後のスケーターのように地面を滑る。滑ったところに青黒いインクが太陽光に当てられ、美しく繊細な線を作り出した。
「クソ…!クソ…!クソが!!!私に勝てないからとまたあんなバケモノを作りおって…!」
「すごいぞ…茶野が動いているゾ!生きてるんだ…生きてるんだゾ…」
「えぇ…!スピードも機動力もばっちしです!これならアームストロングに勝てる!!!」
皆が希望に満ちた瞳を持ち始めた。だがそれとは裏腹に苛つきを覚えるアームストロングは帽子を地面に叩きつけ、パーマがかかった茶髪のような木製の小さな車輪を握り込んだ。その拍子に車輪は5.6個落ちてしまった。
「ふざけるナよ下等セイ物どモ゙が…。そノ程度で悪マに…公爵デアル私に適うワけないダろう…」
髪のようなものを力強く手櫛をするように扱う。ボロボロと車輪がこぼれ落ち、アームストロングの足元は大量の車輪でいっぱいになった。それを見るとアームストロングはニヤリと笑い、白く光るギザ歯を見せた。
「全ての不幸は神の下に!!貴サまラが勝つなんてことはゼッ対にぁ゙ってはナラない。特ダいサービスだ!!私のたマを受けてみヤがれ」
アームストロングが指パッチンをすると、車輪が大きく膨れ上がり、どこから出てきたのか分からない大砲の筒と合体する。視認できるだけで大砲は余裕で100を超えていた。その全てから導火線が長く伸びて、アームストロングの手元に集まっていた。口に咥えられた火のついた煙草が導火線に近づけられる。終わる…終わった…これは逃げ切れない…!来夢、黒澤、赤木、西組は思った。
「アばょ、おめぇ゙ら」




