卵は完全栄養食
宣伝とは言いませんが、近々皆様と世界観を共有できるような物語を投稿しようと思います。投稿しましたら、Xにてお知らせ致しますので、ご興味があるお方は読んでみてください。
あと今回は、1094文字で3分もかからないと思います。
グシュ…
『茶野』の左足は砲弾と共に吹っ飛び、辺りは彼の血肉が散乱し、鉄が錆びたような匂いが漂った。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!!」
感じたこともない激痛で『茶野』は、出したことが殆どない大声を喉の奥から捻り出した。両手で押さえても血は止まらない。体がどんどん冷えていくのを感じた。
「ご…ごめんなさ…ごめんなさい…みこが、みこがここにいたから…」
真っ赤な瞳から大粒の涙を流す少女は、目の前の状況を把握しきれなかった。その瞳は震えながら『茶野』と辺りの血を行ったり来たりする。
『茶野』は痛みに堪えながら少女に声をかけた。
「け…、怪我はない?ごめんね怖い思いさせちゃって…」
冷や汗ダラダラで今にも倒れそうだが、少女に満面の笑みを浮かべる。大事なときほど無理をするのが『茶野』という男であった。
少女はその言葉に一度頷く。その姿を見ると『茶野』は安心して身体を地面に預けた。
「金之助!!!」
「え、は…?嘘だろ、金!!」
黒澤と赤木が気づき、『茶野』に歩み寄る。倒れた『茶野』の口元に手をやると、か細い息が短く何度も繰り返されていた。もうすぐ命の火が消える。それは2人の頭に浮かび上がった。
「しっかりしろ!すぐに医者を呼んで、血を止めて、無くなった血を補えばまだ大丈夫だ。1番近くの医務室はDブロック方面だったはず。俺が呼んでくるから丸は金のことを見といてくれ。すぐ戻るから大丈…」
「晴侶…お前も見たことあるだろ、戦場で仲間が死んでいく姿を。」
「な、何言ってるんだよ。今は時間との勝負なんだから急がないとだろ。」
赤木の言葉に黒澤は動揺する。目の焦点が合っておらず、どこの誰が見ても冷静とは言えなかった。
「助からない。こいつはもう無理だ。」
無情な事実を言い切る。赤木は唇を噛み締めながら、膝についた手を握りしめた。ズボンがシワだらけなる。
別れ?茶野と俺が??なんでどうしてこうなった?走馬灯のように茶野との日々を黒澤は思い出す。何気ない会話や上官にこっぴどく怒られたこと、女性から逃げられて毎度嘲笑う、そんな日々が無くなる。
「、やってみないとわからないだろ…」
悔しそうに黒澤は俯く。その間も『茶野』の息はどんどん小さくなっていた。
「そうですね、やってみないと分からない。」
顔を上げると、正気を取り戻した来夢が『西組』に介助されながら立っていた。
「聞いたことがあるのよ。『卵』は完全なものだって。」
「何言ってるんだ…?確かに卵は完全栄養食とよく言われているが、それと何の関係があるんだ。」
「やってみるんですよ。僕から産まれるバトラーの卵を『茶野』さんに植え付けます」
《本日のグリストーリー》
西組虎右衛門と西組大和は義兄弟。ネグレクトを受け、腹をすかせて公園をさまよっていた虎右衛門は西組家に拾われた。孤児院に入れる意見もあったが、大和が弟にしたいと懇願したため養子となった。
ちなみに今、自衛隊として働いているのは養父が元自衛隊の上層部の人間だったから。




