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メーデー

爆発音と悲鳴が鼓膜を揺さぶる

落ち着きを失った民衆は誰もが自分を助けよと言わんばかりの動きをする。中には自分の子供を置いて行く者やこの騒ぎに乗じてスリを働くものもいた

人間の汚い部分が蝋燭ろうそくが垂れるようにじわじわ明らかになっていく



『こちら赤木。Aブロック発見できず、どうぞ』


『こちら茶野。Bブロックもです、どうぞ』


『こちら黒澤。Cブロックも同様で被害はあるが発見できず、どうぞ』


「…了解。引き続き捜索せよ」



怜夢は無線を使って屋上から辺りを見回していた

一定の間隔で爆発していく建物はまるで花火のようにはかなく散っていく



「いやー参ったな。50人を想定していた実行犯は1人も現れないし、頼みの綱だった来夢の耳はこの爆発で使い物にならない…こりゃ百合ちゃんに怒られるな」



眉毛にしわを寄せながら、座り込んで固まっていた身体を怜夢はよく伸ばした

何回か前屈と後屈を繰り返すと次は肩を伸ばした

人を助けるのが自衛官の役割と言うことを忘れているのかと、怜夢は下でどんどん怪我をしている一般人たちに関心を向けていなかった

心と身体が落ち着くと、制服のマントがふわりと風になびかれる


マントの影に手を突っ込む怜夢

瞬きをする暇もなく怜夢の手には『モシン・ナガン M28-30』が握られていた

銃を身体の周りにクルクル回らせ、一度構えて太陽に向かって発砲した



「いいね、じゃ行くか!」



5階建ての屋上から怜夢は軽く飛び降りた

途中、壁を蹴って空中で一回転したが、その勢いは止まらず加速を続けた

人類が憧れを抱く空を舞う怜夢は、天真爛漫てんしんらんまんにその姿を晒していた


D、E、F、Gと各ブロックを上空から確認する

しかし犯人は一向に見つからない

体中の毛穴が全部開くような嫌な雰囲気が怜夢を包み込む


当たらないでほしい予想が当たる、それは「人間」だろうが「天使」だろうが「悪魔」だとしても変わりないのだろう

気がついたときには、空は怜夢のものではなくなり、大砲の球がすぐ隣を陣取っていた



「やば…!」



声は無機物に届かず衝突音と共に怜夢は吹き飛ばされる

常人なら大怪我だが、流石の反射神経で受け身を取り直ぐ様戦闘態勢を整えた

煌めく黄金の瞳は獲物を見つけたようにギラギラ光り、見るもの全てを飲み込みそうであった



「ようやく出てきたね、まさかそんな力を求めるなんてあたしはびっくりだよ」



そう言い放つ先に1人の人間が立っていた

フードを被っていて性別も年齢も何もわからないそれに話しかける



「君、『悪魔』に心臓を売ったね?」

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