鬼っぽいな
車に揺られて約1時間が経った
辺りは何の変哲もない昼間の住宅街にも関わらず、男たちの声が響き渡っていた
耳の良い来夢にとってはかなり脳と鼓膜の負荷になり、引き攣った顔へ変わった
両手で耳を塞ぎ、少しでも楽になろうと車に深く座る
「ごめんな、ちょっち五月蝿いね。これ持って来といたから着けてて」
運転しながら怜夢はイヤーマフを取り出した
着けると声は囁き程度に変わり、来夢は安堵の息をついた
「さーてついたよ!僕の潜入先、我が国の守護者が属する『陸上自衛隊駐屯地』さ」
そう怜夢が見る先には緑の芝生が広がる大きなな基地が広がっていた
嫌と言うほど耳に入ってきた声はこれだったのかと来夢は納得するのであった
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車を留め、怜夢の手を取りながら歩いていると、一人の男が2人の前に立ち塞がった
「緑谷長官!いったい今まで何処にほっつき歩いていたのですか!!」
「いやー悪いね。今日の見学イベントに妹も参加させようとひとっ走りしてきただけだよ。
それと妹が嫌がるから無駄にデカい声を出さないでくれ」
怜夢はウインクしながらお口チャックのサインを出すと、男も真似して口を閉じた
訳も分からず来夢がボケっと口を半開きにして2人の会話を聞いていると、怜夢がそれ気づいた
「紹介が遅れたね、此奴は僕の部下の『西組』だよ。チョー真面目で、無駄に口も頭も硬くて、少しでも遅れるとすぅーぐ切れちゃって、もうホント鬼みたい」
指を頭の上において鬼のポーズをする怜夢にまたカチンときた『西組』だったが、咳払いをして冷静を取り戻した
「コホン、それはさておき見学者の妹さんをご案内しましょう」
「お、気が利くね。じゃあ来夢ついておいで」
望んでいないのにどうして頭が痛くなる場所に行かないと行けないのかと、かなりの後悔と連れてきた姉に少しばかりのイラつきを覚えた
手を引かれてついて行く途中、怜夢と『西組』が小声で話し始める
「『西組』?見学もいいけどその前に『銃の手入れ』に行かないかい?」
「………、了解しました。『WD-40』を準備すればいいですか?」
「嗚呼、これが終わったら次の休日にまた俺が『鬼殺し』を奢ってやろう」
「…はい、よろこんで」
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ある部屋の前についた
特に何か重要なことがないと入ってはいけない感じはなく、何処にでもありそうな会議室だった
気を利かせた『西組』がドアを開けて2人を先に部屋へ入らせた
「「「お疲れ様です、長官!」」」
中には3人の隊員がいた
それは来夢が懇願するうちの3人だった
「黒澤さん、『赤木』さん、『茶野』さん…」




