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――夜

ベッドで寝ているとまたしても扉を叩く音がした。

扉を開けるとそこにはまたアリサの姿があった。

「お姉様、ごめんなさい何度も訪ねてしまって」

「いいのよアリサ、さぁ中へお入りなさい」

アリサを招き入れると二人でベッドに入った。

しばらく沈黙が続いた後、アリサが口を開いた。

目に涙を浮かべながら喋る。

「お姉様、もうすぐご婚約されてしまうのでしょう?お姉様がいなくなると私寂しいです」

なるほど先日の涙の理由はそれだったのか……。

「大丈夫よアリサ、婚約もすぐにはしないし結婚もまだ遠い先の話よ」

そう言ってアリサを落ち着かせる。

実際にはそうも言ってられない状況なのだが……。


アリサは安心したようでその後はすぐに寝てしまった。

朝起きるとアリサはもう起きていた。

昨晩はあんなにも悲しげな雰囲気だったが今はとても晴れやかな様子だ。

朝食を食べ終えると俺は学園へと向かった。

教室ではまた例の噂話が広がっているようだった。リヒトとハッシュはやはり気まずいのかあまり話していない。

とりあえず俺は席に座ってぼーっとしていた。

すると、一人の男子生徒が話しかけてきた。

確か名前は……、なんだっけ? ああそうだ、ルイス・アルフォートだ。

貴族の中でもなかなかの地位を持っている生徒だ。

確か生徒会のメンバーでもあった気がする。

そして彼は最近隣のクラスに編入してきたらしい。そんな彼が一体何の用だろうか。

ルイスはこう言った。

「君がエリザベス嬢さんだよね、僕と結婚してくれませんか」

いきなりのプロポーズに俺は戸惑った。

何故俺にそんなことを言うんだろう。

理由を聞くと彼は俺に一目惚れをしたと答えた。

その言葉を聞くや否やハッシュとリヒトが飛んできた。

「お前なんなんだよ」

「彼女とはどういった関係だ?」

二人は怒りを含んだ声で問いかけてくる。

当然の反応だ。

だが俺もわからないのだ。

しかしこのままだと二人が怒ってしまう。

何とか誤解を解きたいところだ。

「二人共大丈夫よ、私は気にしてないから」

しかし、俺の言葉は届かない。

結局二人がかりで問い詰められ、ルイスは逃げていった。

俺達はなんとかその場を切り抜けたが、教室内は騒然としている。

これからどうすれば良いのかわからず俺は頭を抱えた。

ーー午後の授業が始まる。授業中もみんなこちらを見てきた。

特にリヒトとハッシュからの視線を感じる。

とても居心地が悪い。

そんな中でも授業は進む。

すると突然先生がこんなことを言い出した。

来週はテストを行うそうだ。

この学校は定期的に試験を行っている。

授業が終わり教室は解散となった。

帰る際に3人で集まることとなった。

「どうする?テスト勉強?」

ハッシュは学科はあまり得意ではない。

「俺は問題ない」

リヒトは学業も優秀なようだ。

「私はテスト勉強したいけれど」

「だったら二人共俺に勉強教えてくれよ」

ハッシュはここぞとばかりにお願いしてきた。こうして三人で勉強会を開くことになった。

放課後、図書館でハッシュに勉強を教える。

ハッシュは頭が良くないが飲み込みは早い方だ。

教える側としては楽である。

一方でリヒトはかなり優秀だ。

学年トップレベルといっても過言ではない。流石は伯爵家の跡取りといったところだろう。

俺はというと普通より少し上くらいのレベルだ。

魔法に関してはそれなりにできる。

これならなんとかなりそうかな。

勉強会は夜遅くまで続いた。

次の日、学校に行くといつも以上にみんなの視線を感じた。俺達の会話を聞いていた人もいたらしく、噂は既に広まっている。

しかし幸いなことに、婚約者候補の話はまだ出ていないようだ。

ほっとしたのも束の間、授業が始まった。

授業中にも周りからはチラチラと見られている。

「全く、困ったものね」

「よっこのモテ女、彼氏二人も作るなんてやるわねぇ」

ミリアが茶化してくる。

「か、彼氏なんかじゃないわよ!二人共友達よ友達」

否定するが、ミリアはニヤついている。

俺の苦労はまだまだ続きそうだ。


――昼休み 昼食の時間になった。

俺達3人は食堂に向かう。

相変わらず周りの視線は俺に向いている。

俺が座ると同時に他の人達の席が空いた。

まるで避けられているかのように。

きっと俺の噂が原因なのであろう。

俺が二人と付き合っているという噂だ。

誰が流したのかわからないが迷惑なものである。

「誰がこんな噂流したのかしらね、こっちはこんなに迷惑してるのに」

「いいんじゃねぇの?なぁ?」

ハッシュがリヒトに同意を求める。

「俺は別に気にしていない」

リヒトは表情を変えずに淡々と言った。

その態度を見てハッシュは不満げにしている。

しかし、俺はそれどころではなかった。

先程から誰かに見られているような気がするのだ。

しかし辺りを見渡しても誰もいない。

気のせいだろうか。

気を取り直して食事を始める。

やはりここでも俺に向けられた視線が気になる。

早く食べて退散しよう。

最近どこへ行っても視線を感じる、一体何なんだろうか。

「最近誰かに常に見られてる気がして怖いわ」

思い切って二人に相談してみた。

「ふむ、ストーキングをされている……ということか」

「ならそんなやつ俺たちでぶちのめしてやろうぜ」

「話はそう単純ではない、相手は俺たちといるときは絶対に仕掛けてこないだろうし、かと言ってエリーを一人にするのも危険だ、これからは俺たちどちらかが常に傍につくというのはどうだろうか?」

ハッシュもその意見に賛成し晴れて私の護衛に当たってくれることとなった。

その様子すらも見つめる瞳……。

その視線の主はルイス・アルフォートだった。

彼は以前にエリザベスへの恋心を告白したが邪魔が入り台無しとなった

ルイスは悩んでいた。

彼女は自分にとって理想の女性なのだ。容姿端麗で、文武両道、誰に対しても優しく接するその姿はまさに聖女のようであった。

しかし、彼女にはすでに二人の男性がいたのだ。ルイスはそれが許せなかった。

しかも二人ともかなりの美男子ときている。

ルイスは彼女を諦めきれないでいた。

ルイスは考えた末に一つの結論に達した。

彼女を自分のものにするためには手段を選ばないと。

まずは彼女の情報を集めなければ。そして彼がとった行動はストーキングである。

彼の執念は凄まじく、彼女がトイレに行った時もついていき、休み時間には教室に入り込むなどしていた。

当然そんなことをすれば周りから不審がられるわけだが、そこは持ち前の演技力で誤魔化した。


 最近は周囲の視線が怖い、常に誰かに見張られてるような気がしてならない。

護衛としてリヒトとハッシュがいてくれるがそれでも一人になる時間はある。

その時がたまらなく怖いのである。

くぅ……この俺が男相手に恐怖心を覚えるなんて……。

しかしそんなことも言ってられない。

何せ本当に怖いのだ。ストーカーとかそういう次元の話じゃない。

もはや呪いのレベルだ。

俺はこの視線から逃れたい一心で、授業が終わると一目散に帰宅することにした。

馬車の停留所まではリヒトかハッシュが送ってくれる。

そこからアリサと馬車に乗り込み帰宅する。

馬車に乗り込むと安堵のため息が出る。

「お姉様、何かあったんですか?」

アリサが心配そうに聞いてくる。

「いいえ何でもないのよ?心配してくれてありがとう」

アリサに情報を漏らすとアリサまで危険に晒されてしまうかもしれない。

それだけは何としてでも避けなければ。

こうして俺は無事に屋敷へとたどり着いた。

今日も無事に帰ることができた。

視線さえ気にしなければ平和な生活である。

しかし、あの視線には明らかに悪意があった。

恐らく何らかのアクションを起こして来るだろう。

そうなればもう隠れてはいられなくなる。

その時に備えて準備をしておかなくては。


「というわけでこちらから打って出ようと思うわ」

「打って出ようったってどうするんだ?」

ハッシュが疑問を浮かべながら聞く。

「私が囮になるのよ」

「そんな危険なことはさせられない」

リヒトが否定的だ。

「俺もリヒトに賛成だぜ、エリーをそんな危険な目にあわせられない」

ハッシュも否定的だった。

「大丈夫よ、二人のこと信頼してるから」

とびっきりの笑顔で言ってのけた。

これには二人も納得せざるを得ず晴れて囮作戦は決行されることとなった。


ストーキングして数週間、ついにチャンスが訪れた。

彼女が一人で歩いている姿を見かけた。

今しかないと思い、後ろをつけることにした。

するとどうだろう、彼女は人気のない場所へと向かっていったではないか。これはまさか誘われているのではないか? そう思ったときには身体が動いていた。

彼女の手首を掴み壁に押し付ける。

「!?」

声を出そうとしているのでもう片方の手で口を塞ぐ……はずだった。

腕に激痛が走り思わず手首を離してしまう。

次の瞬間には身体が宙を舞っていた。

そのまま地面へと叩き付けられる。

「ぐ、ぐおぉぉぉ」

あまりの痛みに呻き声が出る。

「やっと正体を現したな」

リヒトは手首を捻りながら呟いた。

「あっこいつこの前エリーに告白してた……!」

「どうでもいい、衛兵に突き出してやる」

その言葉を聞くと顔が青ざめていくルイス。

「そ、それだけは勘弁してくれ~」

「婦女暴行の現行犯だ、覚悟しておくんだな」

そういってルイスは衛兵に連行されていった。

ちなみにこのことが学園に知れ渡りルイスは退学となった。


俺はストーキング事件の後、しばらくアリサと共に行動していた。

護衛としてハッシュも一緒である。

よかった、これでようやく安心できる。

最近は視線を感じることもなくなってきた。

護衛としてハッシュが付いてくれることになった。

まあ、ハッシュなら信頼できるし何より強い。

剣の腕前は相当なものだしね。


ストーキング事件のせいで私の男性に対する苦手意識はMAX状態だ。

このままでは婚約どころかまともに恋愛すらできない。

どうにかしないと……。しかし今はストーキングされていないようだ。

とりあえずは一安心である。

ストーカー事件は解決したがルイスが退学してしまったせいで私の婚約者探しは難航していた。

ハッシュやリヒトのおかげでだいぶマシになったがそれでもまだダメなのだ。

俺は男性恐怖症に陥っていた。アリサとハッシュとリヒトの三人としか話せないのだ。

これじゃあ嫁に行くこともままならない。

それにしても最近は視線を感じなくなった。


視線の主はルイスだったのだがそれがいなくなってくれたおかげで少しだけ楽になった気がする。

しかし油断はできない、また新しいストーカーが現れるかもしれないからだ。

この世界に来てからもうすぐ半年経つ。

それなのに私は未だに結婚できていない。

リヒトたちには迷惑をかけてばかりだ。

早くこの状態から脱したいのだけど……。

リヒトたちの協力もあり視線が感じられることはほとんどなかった。

しかし完全に治ったわけではなく、たまに視線を感じることがあるのだ。

俺の気の休まる日はいつ来るのだろうか。

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