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本屋では歴史や地理の本を何冊か購入した。
この世界のことが少しでもわかればと思い買ったのだ。
この国のことやこの世界の歴史などはある程度知っておきたいところだ。
あとは洋服店を覗いたり雑貨を見たりとウィンドウショッピングを楽しんだ。
こうして買い物をしている間も頭の中ではどうやって婚約者を見つけるかということについて考えていた。
「とりあえず今日はこの辺にして屋敷に戻りましょう」
今日の収穫は歴史と地理の本が数冊と洋服が数着。それと、この世界にきて初めて異性と話したが、やはり男前な人ばかりだった。
そんなことを考えながら歩いていると前から歩いてきた人とぶつかった。
「きゃぁ」
「おっとすまない、大丈夫かい?お嬢さん」
「え、あ、はい、こちらこそすみません」
目の前には青髪の長髪の優男が立っていた。
「本当に申し訳ない、怪我はないかな?」
「いえ、全然平気です、それでは失礼します」
「ちょっと待ってくれ、君みたいな美しい女性に傷をつけてしまったかもしれないんだ、せめて謝罪だけでもさせてくれ」
そう言って俺の手を握ってくる。
うげぇ、この人絶対チャラいぞ、早く逃げよう。
「いえ、ほんとに大丈……」
言い終わる前に手を握られてる手に痛みが走った。
「いっ、痛い」
「ああ、やっぱり、手から血が出てるじゃないか、これは僕の責任だ、手当をさせてくれないだろうか」
「結構です、このくらいなんともありません」
「いいから来なさい」
そう言うと男は俺の腕を引っ張ってどこかに連れていこうとする。
「ちょっと、どこに行くんですか!?」
「安心してください、すぐそこですよ」
連れて行かれたのは裏路地にある一軒の建物だった。
看板には「治療院」と書かれている。
「さぁ入って」
男に促されるまま中に入る。
「いらっしゃい、あら、またあなたなのね、懲りずに女の子を口説いてるの?」
「やだなぁ、僕はただ治療をしてあげてるだけだよ、それより例の子を連れて来たよ」
「はい、じゃあそこに座らせて」
言われた通りに椅子に腰掛ける。
「まずは消毒するから痛いけど我慢してね」
「わかりました」
そして治療が始まる。
しばらくすると……。
「はい、これで終わり、一応包帯巻いといたからしばらくは安静にしときなさい」
「ありがとうございました」
「どう致しまして、でもあまり無茶はしないように、いいわね?」
「はい」
俺は立ち上がり帰ろうとする。
しかし……
「待ちたまえ」
「まだ何かあるんですか」
「君の名前を聞かせてもらってもいいかな?」
「私はエリザベス・フォンティーヌといいます、以後お見知り置きを」
「フォンティーヌ!?あの領主のフォンティーヌ公爵令嬢というわけかい?」
驚きを隠せないように言葉を紡ぐ。
「これは公爵令嬢殿にとんだ無礼を働いたことをお詫びしたい」
「私はそれほど気にしておりませんので」
「そうはいかない、フォンティーヌ公爵家のご令嬢に怪我をさせたとあっては一大事。どうかお茶の一杯でも奢られせてくれないか」
「そ、そこまでおっしゃるなら」
先ほど自分で誘っておいて断られたのもあってここは承諾した。案内されたのは貴族御用達の高級店だった。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
紅茶を一口飲む。
「美味しいですわ」
「それは良かった、しかし公爵家のご令嬢に怪我を負わせてしまうなんて何たる失態、この罪をどう償えばいいのやら」
「あまりお気になさらないで、大した怪我ではありませんしすぐ治療院へ連れて行ってくれたじゃないですか」
そういうと男の顔は少し明るくなった。
「おっと申し遅れました、僕はアルベール・ラファエル、ラファエル伯爵家の長男をしております」
「といいますとラファエル伯爵様のご子息ですの?」
「おや、父をご存知でしたか」
「パーティーで幾度かお会いしたことがありますわ」
確かにラファエル伯爵とは面識が少しある。
お父様が話している横にいるだけだったが……。
「僕もパーティーで父から離れずにいればもっと早く貴女のような美しい女性に出会えたのに」
う~んこの人女の扱いに慣れてるな、注意しないと。
そういって警戒心を深めるのだった。
「実は僕、アルタイル学園に二年ほど通ってまして」
「まぁアルタイル学園!?私は一年を履修しておりますわ」
「本当かい?それはとても嬉しい偶然だね」
「ええ、それにしてもすごいですね、あの有名なアルタイル学園に在学されているなんて」
「いえいえ、それほどでもないですよ」
それから俺達は会話が弾み、楽しいひと時を過ごした。
「それではまたお会いしましょう」
「はい、是非」
こうして俺は婚約者候補を見つけたのであった。
――翌朝
今日は学園へ行く日だ。
俺はシャルロットさんに制服を着せてもらい髪と整えてもらう。
学園というところが初めてなので如何せん緊張気味だ。
「お嬢様、どうしました?今日はやけに緊張したご様子ですが」
シャルロットさんに気取られてしまう。
これまで生きてきた24年間中学とも高校とも違う『学園』に通うことに緊張を隠し切れない。
でもそりゃ変に思われるだろう、何たって転生直前まで普通に学園に通っていたのだから、
転生直後が休みということもあり学園に通うのはこれが初めてだ。
「いやですわ、この私が緊張だなんてそんな」
「ふむ、そうですねぇ、いつも通りのお嬢様ならきっと大丈夫ですよ」
「そうよね!私なら大丈夫!」
とは言ったもののやっぱり不安なものは不安なのだ。
「お姉様、早く早く!」
「わかってるわアリサ、そんなに急かさないで」
階下へと降りるとアリサが待ちきれんとばかりに急かしてきた。
「お母様、行ってまいります」
「お、お母様、行って参ります」
「二人とも行ってらっしゃい」
俺達を見送るお母様に挨拶をして玄関を出る。
そして馬車に乗り込む。
「じゃあ出発しますよ」
御者が鞭を打ち馬を走らせると、ガタゴトと音を立てて進み始めた。
窓の外を見ると景色が流れていく。
やがて門をくぐり街へ入る。
「ここが王都……」
「どうしたの?」
「いやなんでもないわ」
「お姉様何かあったの?」
「いいえ、何でもないわよ」
心配させないように笑顔を作る。しばらく進むと巨大な城が見えてくる。
「あれがアルスメリア王国の象徴であるアルスメリア城だよ」
「へぇ~」
俺はその大きさに感嘆の声をあげる。
「さあ着いたよ」
「は、はい」
馬車から降りて目の前の建物を見る。
「これが……学園……大きい」
そこには壮大な校舎が広がっていた。
ここは様々な貴族達が勉学に励む場、もちろん学園には通わず専属の家庭教師をつけている人もいる。
「お姉様、じゃあ私はここで」
「えぇアリサ、また放課後」
アリサは初等部なのでここでお別れだ。
噴水広場を後にすると俺が所属する高等部が見えてくる。




