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 俺は真野誠司24歳引きこもりだ。

高校を卒業し、大学にも行かずニートをやっている。親からは見捨てられ仕送りも少ない。まあ、当然だろうな。

俺の両親は小さい頃から勉強もできない息子を疎ましく思っていた。そんな息子に対して愛情など持てるはずもない。

 俺は一人孤独にいつもパソコンゲームをしている。オンラインゲームだ。ネットで知り合った人と毎日一緒に狩りをしたりしている。

しかし、今日は違った。いつも通りオンラインゲームのサイトを開くと見たこともない文字が書かれていた。『ようこそ!異世界へ』と書かれている。そしてその下にはクリックする場所があった。

「なんだこれ?クリックしてみるか」

すると目の前が真っ白になり何もない空間へ放り出された。

「よくぞ来られた魂の旅人よ」

真っ白なローブを着た女性が俺に話しかける。

「あんた誰だ?ここはどこだ?」

焦ってしどろもどろになりながら問いかける。

「私はあなた方の世界でいう神、ここは空間の狭間、あなたは今魂の状態でここにいるのです」

待ってくれ!てことは俺は死んだのか?

「おいもしかして俺は死んだのか?」

神様は冷静に答える。

「そうです。この世に未練がなく何も成し遂げていないあなたが選ばれました」

随分ないわれようだな。

「それで俺にどうしろっていうんだ?」

「地球での魂の量は既に飽和状態にあります。ですからあなたには異世界へ転生して頂きたいのです。契約の印は既に結ばれました」


 契約の印ってまさかさっきのクリックのことか!?

よくわからないが俺は異世界転生させられるらしい。

「女神様!せめて転生先ではモテモテのハーレムにしてください!」

神様とやらはにっこり微笑んだ。

「わかりました、貴方にはスキル・魅了を授けましょう、異世界で是非あなたの願いを叶えてください」

その言葉を最後に俺の意識は途絶えた。

気が付いたら俺は天蓋付きのベッドの上に寝ていた。

身体を起こすとやけに軽い腕も細くて肌も白い。

「んあ」

声もなんだか高いぞ。

部屋は豪華に装飾されていて姿見が置いてあった。

俺はとりあえず自分の置かれた状況を確認すべく姿見の前へと行った。

するとどうだろう、そこには……。

金髪碧眼くせっ毛ショートボブの絶世の美少女が映しだされていた。

前世の俺は身長170cmの中肉中背、顔は普通より下ぐらいだと思う。

それがどうだ顔は女性的そしてスタイルは抜群だ。本当に可愛すぎる、元の顔の面影が一切無いし、自分で見ても見惚れてしまう程だ。

髪の毛はサラサラしていて絹糸のようで、瞳は大きくまるで宝石のよう、肌は白く透き通っている。

胸はDカップはあるんじゃないかと思う。

「な、なんじゃこりゃ~!!!」

奇声を発する自分の声すら美しい。

途端にドタバタと足音が聞こえてきて扉が開かれる。

「お嬢様どうなさいました!?」

黒髪のポニーテールロングのメイドさんが慌てて入ってきた。

「え?お嬢様?」

「お嬢様何が問題でもありましたか?」

え、いや今すべてが問題だけど……。


 頭の中で会議が開かれる。

どうやら俺は今お嬢様らしい、しかも絶世の美少女だ、この場は話を合わせておくに越したことはない、そう結論付けられた。

「ああいや何でもありませんわ」

こんな喋り方でいいのだろうか、とりあえずメイドさんには部屋を後にしてもらいたい。

「そうですか大声を出されたので何事かと思いました、また御用があればお申し付けください、それでまた後ほど、は失礼します」

ガチャっと扉が閉まる。

どうやら一人に戻れたようだ。

部屋の中を見渡すと鏡台やクローゼットなどがある。

そして今俺はネグリジェを着ている。

ふと見渡すと机の上に本がおいてあった。

ハードカバーの本でどうやら日記のようだ。

ここから何か手掛かりが掴めるかもしれない、俺は意を決してページを捲った。

すると本は光だし俺は急な頭痛に襲われた。

そこでこの身体の今までの生き様、性格、交友関、家柄などが流入してきた。

頭がパンクしそうな程の情報量と一気に流入してきた。

眩暈を起こしながら何とかその場に立つ。

しかし俺にはそんなこと気にする余裕なんてなかった。なぜならその本の中身は、今まで俺が経験したことのないような内容だったからだ。しかしこれでこの世界での俺という人物像がわかった。

しかしなんだったんだ今のは女神様の仕業か?

本は輝きを失っておりもうただの日記帳だ。

でも読む必要はないくらいの情報が頭に叩きこまれた。

「おいおい俺男なのに女の身体だぞ一体どういうことなんだよ」

戸惑っているとコンコンッと扉をノックする音が聞こえた。

「誰?」

「お嬢様お着替えの時間です」

そういうとさっきのメイドさん、この人はシャルロットさんというらしい。

そのシャルロットさんが部屋へと入ってきた。

「お嬢様そろそろ起床のお時間です、お着替えのお手伝いに参りました」

え?着替え手伝ってくれんの?

確かにお嬢様は自分では着替えないってのは聞いたことがあるが……。

何よりこの世界の服の着かたが分からないから渡りに船だ。

ここは大人しく着替えさせてもらおう。

「それでは失礼します」

そう言ってシャルロットさんは俺の服を脱がせていった。

そのあと複雑そうなドレスを着せられたが、これを自分で着ろと言われてもできる気がしない。

「あ、ありがとう」

「いえこれもメイドの勤めですから」

そういうとシャルロットさんはテキパキと身支度を整えてくれた。

その後椅子に座らされて髪ととかしてもらった。

その後俺は食堂へと連れて行かれた。

そこには家族がそろっていて皆食卓についていた。

「遅いよ僕の可愛いエリー今日はやけに寝坊じゃないか?」

そういう放つのは俺の兄に当たるシェルフォード・フォンティーヌ、我がフォンティーヌ家の長男だ。

「お姉様、今日はお寝坊さんなのですね」

まだ幼さが残るこっちは妹のアリサ・フォンティーヌ。

「たるんどるなフォンティーヌ家の一員足るもの規律正しく生活するものだ」

髭を蓄えたごついおっさん、これが俺の父に当たるガエボルグ・フォンティーヌ。

我が公爵家フォンティーヌ家の当主だ。

「すみませんお父様」

そして俺はエリザベス・フォンティーヌ、通称エリー、花も恥じらう16歳だ。

って何言ってんだ俺、俺は男だぞ!

「さぁもういいから食卓につきなさい」

怒っているわけでもなさそうなのに厳つい顔の気圧されてしまう。

食卓につくと食事が運ばれてきた。

 まるでフランス料理のフルコースだ。

しかしテーブルマナーなんて知らないぞ俺。

ところが食べ始めると流入現象のお陰か普段全くやってこなかったはずのテーブルマナーもスッと出てくる。

 俺こんな器用だったっけ?

流入現象前と後との記憶が混乱する。

器用に食事を終えメイドさん達が淹れてくれた紅茶を飲む。ぷはーっと言いたいところだが我慢する。

「美味しいです」

「そうですか、それは良かったです」

にっこりと微笑むメイドさん。

そうして俺は部屋へと戻ってきた。

「ふーやっと堅苦しさから解放された」

なんか気のせいか口調もお嬢様っぽくなってきてる。ボロが出る前に一人になれるのは好都合だった。

 いや流入現象のお陰でボロというボロはでなかったが油断禁物だ。

再び姿見の前に立ってくるっと回ってみる。

この世のものとは思えぬほどの絶世の美少女が鏡の前に立っていた。

「やっぱりこれが私なのね」

!?私?心の中では男でも口調はお嬢様口調が自然と出てしまう。

コンコンッと扉が叩かれる。

「どなた?」

「僕だよエリーお邪魔してもいいかな?」

 その声は兄のシェルフォードか何の用だろう?

「空いているわどうぞ入って」

その言葉と共に扉が開かれ兄が入ってくる。

「今朝は体調でも悪かったのかい?僕の可愛いエリー」

「あら心配して来てくださったの?お心遣い感謝いたしますわ」

そういうのも束の間いきなり抱きしめられた。

「キャッ何するんですの!」

すぐに突き放す。何考えてんだこの野郎!

「おおこれはすまないつい妹が心配でね、行き過ぎた兄心をして見逃してはくれまいか」

うーんこの兄……シスコンだ。

「別に体調がすぐれないというわけではありませんわ」

「おお、それならよかったもし何かあればちゃんと僕に相談するんだよ子猫ちゃん」

悪寒が走る。何言ってんだろうこいつは。

「お気遣いには感謝しますが過剰なスキンシップは控えていただきたく存じますわ」

こんなこと男にされるなんて考えたくもない。

はっきりNOと突きつけておく。

「今後もお兄様も自らの行動に責任を持ってください」

「うぅ冷たいなぁエリー、以前はあんなに仲良しだったじゃないか」

「それはまだ私が幼かったころの話です!こう見えても私はもう16です、一人前のレディになるべく日々鍛錬の毎日です!」

それを聞くと兄はしょんぼりと肩を落として部屋を後にした。

「まったくお兄様ったら……」

俺も少しだけ反省する。

今日はせっかくの休日なのだ、いつまでも兄のことで時間を取られたくはない。

「まぁいいでしょう。さっそく準備を始めますか!」

そうして俺は自室に戻りクローゼットを開ける。そこには普段着からドレスまでがずらっと並んでいる。

どれも一級品だ。

その中から一番よさそうなりのワンピースを手に取る。

「シャルロットさん~」

一人では着替えられないのでメイドを呼ぶ。

「如何なされましたかお嬢様」

 すぐに飛んできてくれた。物凄い優秀なメイドさんだ。

「あのこれに着替えたいんですけど……」

今着ているのはドレスといった感じで落ち着かない。

「かしこまりました。ではお着替えのほうを」

そういうとテキパキと服を脱がせ着せてくれる。多分俺一人だと脱げもしないだろう。

「仕上がりは如何でございましょうか?」

鏡を見るとそこには完璧な美少女がいた。

「ありがとうございます。とても素敵ですわ」

俺は微笑みながら答える。

「いえいえとんでもない事でございます」

そういって執事は一礼をして出ていく。

「ふぅー……やっと終わったわ……」

俺はぐったり。

どうやら普段から俺言葉を使おうとしてもお嬢様口調に変換されるらしい。

喋ろうと思えば喋れるのだが咄嗟に出る言葉はお嬢様口調だ。

冴えない引きこもりの俺が今は美少女として若返っている。

この現実がまだ受け入れられない。

一体これから俺はどうなってしまうんだろう……。

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