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21.

 (※父親視点)


 私は、なんてことをしてしまったんだ……。


 あの時は、自分は正しいことをしたのだと思った。

 そうとでも思わないと、引き金を引けなかった。

 しかし、時間が経つにつれ、段々と後悔していた。


 何も、殺すことはなかった……。


 あの銃で脅すなり、ほかにやり方があったかもしれない。

 しかし、あれが一番確実な方法だった。

 それにもう、引き金を引いて妻を撃ったという事実は、消えることはない。

 私は、妻を殺してしまったのだ。


 兵たちには取り調べ、というより、簡単な事情聴取を受けた。

 私は、自分に都合のいい証言をした。

 もちろん、嘘も含まれている。

 しかし、今更嘘をつくことなんて気にしていない。


 殿下に大きな嘘をついているし、私の偽装工作は完璧なはずだ。

 きっと、バレることはない。

 大丈夫、きっと、大丈夫だ……。


 頭では、黙っていたらバレることはないと考えているが、心は不安な気持ちに支配されていた。

 私は取り返しのつかないことをした。

 いつか、バレてしまうのではないか……。

 何か、見落としはなかったか?

 私の偽装工作は、本当に完ぺきだったか?

 焦りや不安に支配され、そんなことばかり考えてしまう……。

 

 とても、生きた心地がしなかった。

 これからずっと、こんなに重くて苦しいものを抱えながら、私は生きなければならないのか。

 それはある意味では、死んだ方がマシだと思えるほど、辛いものだった。


 どうか、私が撃ったことは、このままバレないでくれ……。


     *


 (※ウィリアム王子視点)


 エマ、可哀想に……。


 彼女はずっとすすり泣いている。

 無理もない。

 愛する母親を失ったのだ。

 ショックを受けるのも、当然のことだ。 

 不安な気持ちになってしまうのも、しかたがない。


 そんな彼女に私ができることといえば、優しい言葉をかけて、慰めることくらいだ。

 エマはずいぶんと震えている。

 母親を失ったショック、そして、もう少しで自分も死んでいたかもしれないという恐怖があるのだろう。

 しかし、強盗は金目の物を狙っただけで、誰かの命を狙ったわけではない。

 だから、エマの命が狙われる心配はない。

 私は何度も、彼女にそう囁いた。


 しばらくすると、彼女も少しは落ち着いてきた。

 声は震えているが、しっかりと受け答えできるようになっていた。

 そこで彼女は、兵に簡単な事情聴取を受けた。

 彼女は、家を何時に出て王宮に戻ったのか、答えていた。


 これで、強盗が何時ごろやってきたのか、大体の時間がわかる。

 エマが王宮に戻るために家を出た時間と、彼女の父親が帰宅した時間の間が、犯行時刻というわけだ。

 強盗には、早く捕まってほしいものだ。

 そうすれば、少しはエマもほっとするだろう。

 私の愛するエマにこれほどまでに悲しい思いをさせた強盗に、私は大きな憤りを感じていた。


 しかし、彼女の母親を殺したのは強盗ではなく、意外な人物だったのである……。

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