表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

#8

三人が出て行った後も吐き気が落ち着くまでしばらく動くことができなかった。

なんとか吐くことが我慢できてよかった。

とにかく換気をしないと、と思って、まだ弱くない吐き気を我慢しながら窓を開けた。

優さんたちはまだ近くにいるみたい。近くにいるから臭いことは臭いけど、マシにはなったかな。

……やっぱり話さないとダメだよね。何があったのかも知りたいし。けど、あんまり気が進まない。だって、においが。それにあの姿も。

なんて考えてると、声がした。


「なみぃ。聞こえるか?いろいろ説明したいから出てきてくれないか?ある程度広い場所の方が少しはにおいも気にならなくなると思うから」


それは均ちゃんの声だった。

優さんを止めるためだけじゃなくて、説明するためにも来てくれてたんだ。


「しばらくしたら今から言う場所に来てほしい。俺たちが行くのにもかなり時間がかかるから、なみぃは明日になってから来てほしい」


均ちゃんはそういうと私の聞いたこともない住所を言った。

どこそれ?そんなとこに私行けるの?

こんなときこそ文明の利器!検索♪検索ぅ♪

……さっきまで私、めちゃくちゃ吐きそうだったのよね。

何がどうしたらこんなにも軽く考えることができるのかしら。

私はもっと慎重っていうか、こんなにも能天気じゃなかったと思うんだけど。

……もしかいて混乱してる?パル○ンテ?ちょうおんぱ?

ていうのを考えてるのも私らしくない気もする。

ああ、もうどうしちゃったの、私。こんな感じじゃなかったのに。

あーあ、私、生きてる意味、あるのかな?ないのかもな。


……って!こんなこと考えるのも私らしくないの!

こんなこと考えそうな子は知ってるけど!

結構親友だけど!

私はそんな子じゃないの!

あれ?これってディスってる?

ごめんね。心の中でしっかり謝っとくから許してね、親友。


で、何の話だったんだっけ?

そうだ。均ちゃんに聞いたこともないような場所に来るように言われたんだ。

さっきから私は笑ったり、泣いたり、落ち込んだり、せわしないわね。いろんな顔しちゃって。

でも、こんなとき、どんな顔をしたらいいの?


……わからない。


答えをくれる人は、もう、いない。


そう思ってたんだけど、さっき会ったんだよね。

すごい姿だったけど。それにすごいにおいもしたけど。

よくお隣さんとか出てこなかったな。

そもそもここに来る間に誰も何とも思ってなかったの?

通報とか、されなかったの?

……もしかして、他の人には見えてないとか?においも感じないとか?

あれ?それって………………お化け?

え?めちゃくちゃ怖くない?

怖いよね?怖くないわけないよね?

うん。怖くないわけないじゃない。怖いよ。

怖いなぁ、怖いなぁ。怖いなぁ、怖いなぁ。


でも、そう考えると説明がついちゃうのがより怖いわよねぇ。

私にしか見えないし、においも私しか感じないんだったら騒がれないのも当たり前だし、優さんが私に触れようとしたのを止めたのもお化けって気づかれないようにとか。


でも、そう考えると、お化けっていうより私の妄想?

私、そんなに会いたくて会いたくて震えるほどだった?

そんなこと、ないって言いきれないとこも怖い。


でも、均ちゃんが私の知らない地名を言ってたよね。

調べたらホントにあるみたいだし。


あれ?こうなってくると、説明つかなくない?

全部現実なのかな?

もしかして、私、だまされてる?

大ちゃんの話も、もしかしたら、嘘?

……何のために?

優さんも一緒になって、どういうこと?

とにかく均ちゃんの言ってた場所に行くしかないのよね。

なんだかいっぱいグダグダ考えちゃったけど、このまま何も知らないでいるのも怖いのよね。

嘘や冗談だったとしたら、大ちゃんがいなかったのがおかしいといえばおかしいし。

とにかく、わからないことばかり。

説明してくれるっていうんだから、しっかり説明してもらおうじゃない。

時間はあるんだから、落ち着こう。

落ち着いたら、何か食べに行こう。

というか、落ち着くために、おいしいものを食べに行こう。うん、そうしよう。

こういうときは自分を甘やかしてもいいよね?

そうだなぁ、ケーキがいっぱい食べたいなぁ。

ショートケーキは外せないし、チーズケーキも捨てがたい。チョコケーキは鉄板だよね。フルーツタルトとか、今ならどんな果物がのってるんだろう?

考えてたら、ますます食べたくなってきた。


明日のことはひとまず忘れて、ケーキを食べに出かけた。

ケーキをひとつ、ふたつ、みっつと食べて、明日の朝に食べる用にも買って帰り、幸せな気分で眠った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ