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#7

大ちゃんに長い告白をされてから数日が過ぎた。


優さんは本当に死んじゃったのかな。

大ちゃんがそんな嘘を言うはずがないから、たぶん死んじゃったんだろうな。


大ちゃんもあれから姿を見てない。

警察から何も連絡がないから、捕まったわけでもないんだと思う。


大ちゃんに俺をどうしたいって聞かれて、私は何も答えなかった。

答えられなかった。

すると、大ちゃんは黙って出て行ってしまった。


……悪い夢だったと思おう。

優さんや大ちゃんたちのことは忘れられないと思うけど、引きずらないように生きていこう。

私には結婚なんて幸せ、まだつかんじゃいけなかったんだ。

もっといろいろ頑張んなくちゃいけないんだ。

そう、思うことにしよう。

実際、まだ夢は叶えられてないし。

叶えようとしてる途中だし。

休んでる暇も、わき道にそれてる時間もない。


そのとき、部屋の扉が開いて、血まみれの優さんが入ってきた。


「キャーーーーーー」


あ、こんな悲鳴出すんだ、私。

……じゃなくって!


「ゆ、優さん?優さんなの?」


「そう、だよ。な、奈美さ、ん」


ちょっと待って。落ちついて私。

とりあえず、深呼吸、深呼吸。

すーはー、すーはー。

……気持ち悪い。なにこれ。

臭いっていうか、空気が腐ったみたいな。

え?まさか、優さんが腐ってるの?

どういうこと?理解できない……。

と、とにかく、


「大ちゃんに優さんは死んだって聞いたんだけど?」


「私が、死んだ?そう、ですね。一度、死んだ、んだと、そう、思い、ます」


途切れ途切れに話す優さん。

優さんに何があったの?死んでるのに話してるの?


「え、でも、今こうして話してますよね?」


「それは、私にも、よく、わかりま、せん。どうして、動いて、いるのか、私にも」


……ものすごく気持ち悪い。優さんの姿も、においも。吐き気が強くなる一方。

今までのこと、悪い夢だったと思おうって思ったところだったのに。

これこそ、悪い夢みたいじゃない。悪夢じゃない。


「それで、優さんはどうして、ここに?」


「どうして、って、私は、奈美さんと、結婚、するん、だから。おかしい、かな?」


「結婚って……、その体で、え?」


そうか。結婚するのか。

でも、え?この血まみれの優さんと?結婚?

そもそも優さん死んでるんだよね?

死んだ人と結婚?


「おかしい、こと、かな?こう、やって、話す、ことも、できるん、だから、結婚、するのも、おかしい、ことじゃ、ないと、思う、よ」


「確かに話はできるけど……」


そういう問題じゃない気がする。

とにかくこのままだと確実に吐いちゃうから優さんには出て行ってほしい。

こんな姿だけど、好きだった人の前で吐きたくはない。


「じゃあ、問題、ないじゃ、ないか。結婚、しよう、奈美、さん」


「けど、それは、無理」


これ以上一緒にいると吐いちゃう。

というか、吐く。むしろ吐きたいくらい。


「無理?私、の、こと、嫌いに、なった、の?」


そうじゃない、って言いたいけど話せない。

話そうとしたら、たぶん吐いちゃう。

口を押えたまま顔をそらすしかない。


「こっちを、見てよ、奈美、さん。私は、こんなに、も、あなたを、愛し、て、いる、のに」


その言葉は嬉しいけど、無理。姿も、においも、無理。

お願い。気づいて。


「奈美、さん」


私の吐き気には気づかない優さんは少しずつ歩み寄ってくる。

そのとき、


「藤田さん。一度、外に出るんだ。あなたは私たちから出る死臭を自覚したほうがいい」


優さんを止めて外に連れ出していったのは、血まみれの均ちゃんと三井君だった。



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