#6(大視点)
なみぃも思ったよね。何でそうなるの?って。
今考えれば、俺もそう思う。
考えてる内容が明らかにおかしい。正気の人間が考えることじゃない。
何をわけのわからないことを考えてるのかって。
でも、まあ、正気じゃなかったんだろうね。
正気だったら、そもそも殺害計画なんて立てないし。
いろいろ準備をして、ホントいろいろ準備をして、いやぁ、早かったな、準備。
二日で終わったからね、準備。
いやに早かったね。こんなに早く準備が整うなんて思わなかった。
もっと時間がかかってれば、こんな状況にもなってなかったかもしれない。
バイクの準備と場所を探すのに時間がかかると思ってたんだけどね。
これが意外ととんとん拍子にことが運んじゃって、運んじゃって。いや、まいった、まいった。
バイクを運ぶための車も必要ってことに気づいたけど、これも意外と簡単に手配できちゃって。
いろいろすんなり計画が進んでて、むしろ怖かったね。
何かよくわからないものが後押ししてる感があったよね。
ここで立ち止まる覚悟か勇気があればなぁ。
そんなこと、思っちゃうよね。
さっきも言ったけど、後悔先に立たずっていうよね。当たり前のことだけどね。
後悔なんだから。後で悔いるなんだから。
先に悔いるじゃセンカイじゃないか。
っていうかどうして先に悔いることができるんだよって感じじゃないか。
……なみぃ、俺、こんなキャラだったっけ?
たぶんきっと、動揺してるんだと思う。
動揺してるからこんなわけのわからないことを言ってるんだと思う。
うん。話を戻そう。
それで決行したんだよ。それが先週のこと。
まず藤田さんを拉致しないといけなかったんだけど、どうすればいいか、結局思いつかなかったんだよね。
だから、普通に話しかけることにしたんだ。
ちょっと、この車に乗ってついてきてくれますかって。
少しくらいは疑われるかなって思ってたけど、微塵も疑われなくて、あっさり拉致に成功。
本人は拉致されたなんて思ってなかったと思うけど。
藤田さん、いい人すぎるわ。車の中でも一、二回しかどこに行くのか聞いてこなかったから。
着いてからのお楽しみです、っていうと納得しちゃうんだから。
ここでも後戻りできたのかなって今なら思うよ。
ホント、後悔先に立たず。後で悔いるから……ああ、うん。話を戻そう。
それから、どうやって無理やりチキンレースをさせるのかも、結局思いつかなくて、そのまま言ってみたいんだよ、チキンレースしませんかって。
そしたら思いのほか話にノってくれて、正直アホの子なのかなって思ったよ。
こんなアホの子を騙すような真似して良心が痛まなかったかといえば嘘になるかな。
でもね、ここでも後戻りすることはできなかった。
ホント、後悔先に立たず。後で……ああ、うん。話を戻そう。
でも、ここで計算外のことが起きた。というか、わかった。
藤田さんはバイクの免許を持ってなかった。
あ、これはここでやめろって神様が言ってるのかなって思ったよ。
でもね、裏で悪魔が笑ってた。
藤田さん、なぜかバイクの運転ができたんだ。
何でも若いときは悪くて、ちょくちょく盗んだバイクで走ってたんだとか。
どこの尾崎だよ!って三井さんがツッコんでた。
藤田さんは全然ピンときてなかったけど。
でも、それが幸であり不幸でもあったんだけど。
そして、いざチキンレースをすることに。
よくよく考えたら、藤田さんも含めて誰も本気で勝負する必要はなかったんだよね。
そうすれば、誰も死ななかったわけで。
それに、本気で殺す気であればバイクに何かしら手を加えればよかったんだけど、誰もそんなこと考えてなくて、全員本気でチキンレースすることになったんだ。
で、事故は起きた。
スタートの合図の直前に藤田さんは走り出したんだ。
たぶん、ブランクのせいだと思う。
運転ミスして制御もできてないみたいだった。
そのあとは何が起きたのはよく覚えてない。
気が付いたら、みんな倒れてた。
俺以外みんな死んでた。
俺だけ生き残ってしまった。
藤田さんを殺す計画が均ちゃんも三井さんも殺すことになってしまった。
これが因果応報ってことなのかな。
自業自得ってことなのかな。
罪悪感がうんぬんってことも考えてたけど、結局すさまじい罪悪感が残ったよ。
ホント、後悔先に立たず。後……ああ、うん。くどいね。話を戻そう。
とにかく、あったことを全部なみぃに話さないといけないって思ってここいる。
ねぇ、なみぃ。俺はどうしたらいいかな?