#3
爆風が残りの二人と私を襲う。
幸い、私は離れた位置にいたのでケガをすることもなかった。
でも、残りの二人は衝撃と飛んできたバイクの部品で転倒していた。
救急車で近くの病院へと運ばれた私たち。
あれだけの事故だったのに、三人はわりとピンピンしていた。
心配したのに、なんか損した気分。
しばらく入院が必要ということなので、お見舞いに来た。
三人とも同じ部屋に入院しているみたい。
部屋に入るとベッドが4つ。
入ってきた私を見ている三人が見える。
……なんかうずうずしているように見えるのは気のせい?何かを期待してる?
よくわからないけど、一番近くの均ちゃんに話しかけた。
「どうですか?ケガの調子は」
「くそぅ!」
ん?なんか悔しがってる大ちゃんと三井君。
なんか昔、芸人さんがそんな感じに叫ぶモノマネしてたよね。
でも、なんなの?
「何悔しがってるの?」
これはもう聞いちゃったほうが早いよね。
「誰のベッドに一番最初になみぃが来るか、賭けてたんだよ」
うん。何言ってるの、均ちゃん。なんなの、その賭け。よくわかんないんだけど。
みんなのお見舞いに来たんだから、そんなことを賭けないでほしいな。
「で、みんなどうなんですか?ケガの調子は」
「バッチリ!」
「問題なし!」
「元気すぎて車いすで走り回ってます!」
「いや、ダメでしょ!それは」
何やってるの、この三人は。
三人ともギプスをしていたので、それぞれにメッセージを書いてあげた。
三人ともめちゃくちゃ喜んでくれた。
互いに見せ合って、どっちの文章が長いとか、でも、こんなこと書いてあるよだとか。
そんなところで競わないでほしい。仲がいいのか、悪いのか。
また別の日。お見舞いに行くと、病室で三人が看護師さんに怒られていた。
「佐藤さん!鈴木さん!三井さん!あなたたちはどうしてそんな危ないことをするんですか!昨日も、一昨日も、その前も!一体いくつ何ですか!子供なんですか?違いますよね?それなのに…………」
……これは入っていい雰囲気なのかな?
入っていいのかわからず、扉から中をのぞいていると、
「なんか、車いすでチキンレースをしたらしいですよ」
え?何?誰?
いきなり話しかけられてびっくりした。
声をしたほうを見ると、ベッドの上に男の人がいた。
そうだった。ここは四人部屋だった。
静かに、できるだけ気配を消すように部屋に入って、男の人のベッドのわきに座った。
「えっと、何ですって?」
「車いすでチキンレースをしたそうです。しかも、屋上で」
……やっぱりバカじゃないかな、あの三人は。
怒られている三人を見ていたら、なんか笑えてきた。
ホントにバカみたい。いい大人がこんなことで怒られてるとか。
ふと、隣の男の人も笑ってることに気づいた。
「おもしろい方たちですね」
おもしろいといえばおもしろいのかな。
「そうとも言えますね。いい加減、変に競うのはやめてほしいんですけど。えっと……」
「あ、私は藤田っていいます。藤田優」
「私は池田っていいます。はじめまして」
なんか不思議な雰囲気の人だな、藤田さん。
それからお見舞いに行くと藤田さんとも話すようになった。
藤田さんは大ちゃん、均ちゃん、三井君とも仲良くなったみたい。
五人でバカみたいに笑って看護師さんに怒られることが何度も。
なんか昔から藤田さんのこと知ってたみたいに思えた。
知り合ってまだ一ヶ月くらいしか経ってないのに。
ホント、不思議な人。