#2
走り出した三人はそのスピードを徐々に上げて…………。
徐々に上げて……。
徐々に……。
って、遅くない!?
めちゃくちゃ安全運転じゃない!?
チキンレースってそういうのだっけ?
そして、壁から二、三メートルくらい手前で止まる三台のバイク。
うん。安全運転にもほどがあるよね。
「なめてんのか。このチキン野郎ども」
ああ、またケンカが……。
「いやいや、その言葉、そっくりそのまま、のしをつけてお返しするよ」
「何だって?」
「まぁまぁ、やっぱりここは二人の間とって私の後ろってことで」
「だから、何いってるの三井さん」
「冗談は顔だけにしといて」
「均ちゃん。好きですね、それ」
……これ、いつ終わるの?
いつになったら出発するの?
あーあ、楽しくなりそうだったのにな。
「こうなったら、いくら積んだら譲ってくれる?」
え?均ちゃん?お金?積むの?
「均ちゃん、見損なったよ。お金って」
「大ちゃんには言われたくないな」
「どういう意味だよ!」
うん。均ちゃんが言いたいこともわからないでもない。
「で、均ちゃんはいくら出すつもりなんですか?」
え?み、三井君?
「お!三井さんは買収されてくれるんですか?」
「んー、そういうわけでもなくて。いくらくらい積むのかなって」
「いくらでも積もうじゃないですか」
「じゃあ、百万とか?」
み、三井君!?何言ってるの?
「いいよ」
い、いいよ!?均ちゃんも何言ってるの?私にそんな価値ないよ?
「まあ、冗談はさておき、も一度やりましょか、チキンレース」
「だから、冗談は顔だけに……」
「もういいですから、均ちゃん」
え?もう一回やるの?もうやめて。お願い。心臓に悪いよ。
「だ、だから、私のために争わないでよ!」
三人とも無言で私を見てる。
は、恥ずかしいから何か言ってほしいなぁ。
そして、親指を立てる三人。
グッ!じゃないから!ケンカをやめてほしいだけだから!
なんて思っても止まらない三人。
……もう黙って帰っちゃおうかな。
そんなこんなでまた壁に向かって走り出した三人。
また安全運転でしょ?なんて私の考えとは違い、さっきよりスピードが出てる。
そう思った直後、一台のバイクがバランスを崩したみたいで倒れてしまう。
投げ出される人。壁に向かって滑っていくバイク。
そのまま壁にぶつかり、バイクは爆発した。