#13
え?何言ってるの?均ちゃん。私を、食べたい?
「えーと、実は私も。奈美ちゃんのことを食べ物として見てるところがありまして。大さんもそうですか?」
三井君の問いかけに首を縦に振る大ちゃん。え?どういうこと?四人とも私のこと食べたいの?
「つまり、私、ここじゃ食料ってこと?」
「端的に言えばそうだね。だから、なみぃ。帰ってほしい、っていうか逃げてほしい。で、三井さんは自分を食べればいいんじゃない」
「それじゃあ、均ちゃん。あなたを食べてあげようか」
「へぇ、こんな姿の俺を食べようなんて、三井さんは変わってるね。あ、もともとか」
「ホント、私のことあおるの好きだね、均ちゃんは。ちょっと気持ち悪いよ、見た目も見た目だし」
「え?ちょっと何言ってるかわかんない」
……なんか、均ちゃんと三井君の漫才みたいのが始まってる。
この二人は何なのかな、毎回毎回。飽きちゃったりしないのかな。大ちゃんも少しは止めようとしてほしいんだけど。あ、今はしゃべれないからムリかな。
「奈゛美゛、さ゛ん゛。奈゛、美゛、さ゛、ん゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
優さんがおかしい。なんか叫びだしてるし、三人を振りほどこうと暴れてだした。
三人は必死に優さんを抑えようとしてる。
「とにかく、なみぃは逃げて。いつまで藤田さんを抑えられるかわかんないし、俺たちが藤田さんみたいになるかもしれないから」
均ちゃんが必死になって抑えながら叫んでる。
「でも。……でも」
みんなをただ置いていけるわけがない。
「それじゃあ奈美ちゃん。優さんを縛るロープとか、できれば鎖とか、どっかから持ってきてくれないかな。その方が藤田さんを抑えやすくなると思うから」
たしかに、三井君の言うように、何か道具があった方が優さんを抑えやすいかも。
「でも、それって結局、私に逃げろって言ってるんだよね?」
「ちっ、気づいたか」
え?今舌打ちしたの?三井君。
「三井さん。魂胆が丸わかりだよ。もうちょっとわかりにくくしないと、いくらなみぃだからって気づいちゃうよ。ホント、冗談は存在だけに……」
「言わせないよ?さすがにもうそれは飽きてこない?でも、そっか、丸わかりか。さすがの奈美ちゃんでも気づいちゃうか」
え?なんか私、ディスられてない?
「均ちゃんに三井君。それは私が鈍感ってこと?天然ってこと?」
「いや、そんなことないけど。ねぇ、三井さん」
「ねぇ、均ちゃん。そうですよね」
こんなときだけ妙に気が合っちゃって。私、そんなに鈍感なの?天然なの?
そもそも天然って何?天然ボケ?ボケてるつもりないんだけど。あ、でも、ボケてるつもりないのにボケちゃうから天然ボケなのかな。って、そんなこと今考えなくてもよくなくない?
「ねぇ、今の状態、わかってる?均ちゃんも三井君も緊張感がなさすぎ」
「いや、私はいつも、奈美ちゃんの前では緊張しっぱなしなんだけど」
「三井さん。冗談はほどほどにね。いつまでも同じツッコミしてくると思わないほうがいいよ」
「ちょ。そこは冗談は存在だけにって言うとこ。私の渾身のボケが……」
「三井さんのボケってイマイチおもしろくないというか、つまんないんだよね」
「均ちゃん。オブラートって知ってます?」
「たぶんセンスが古いっていうか、言葉が古いっていうか、考え方が古いっていうか、たぶん三井さんが古いんだね」
「私が古いって何?どういうこと?どういう意味?どういう状態?」
……なんか、均ちゃんと三井君の漫才みたいのがまた始まってる。
二人ともこんな状況でも通常運転なんてどっかおかしいんじゃないかな。
「冗談はほどほどにして。三井さんの言う通り、ロープか鎖か何かあった方が抑えやすくなるのはたしかだね。俺たちは取りに行けないから、なみぃ、頼めるかな」
結局、私がロープか鎖をとってくる以外、方法はないのかな。
二人に言いくるめられた感じはあるけど、しょうがない。
「わかった。みんな、私が戻ってくるまで待ってて」