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#12

「さて、どうやって藤田さんを止めようか」


優さんを警戒しながら、二人に話しかける三井君。


「そんなんだから三井さんは存在が冗談だなんて言われるんだよ。まぁ、説得もできないだろうし、止めようにも気絶も死にもしなさそう。とりあえず、三井さんが一人で突撃してみようか」


答える均ちゃん。

え?死ぬ?


「ちょっと、死にもしなさそうって、どういうこと?」


声がちょっと慌ててしまった。だって、それくらい衝撃的な言葉だったから。


「止めるためにはそうするしかないかもしれないし。その可能性も考えておくべきだと思うよ、なみぃ。そもそも死んでるからね、藤田さん」


たしかに。心臓は動いてないし、血も流れてない。呼吸の必要もない。

今の状態でどうして生きているといえるのか。

頭ではわかっているけど、心では……


「で、でも……」


「奈美ちゃん。私たちも藤田さんと同じだからね。死んでるんだからね。生きてたときとは、考え方や捉え方が違うんだと思うよ」


三井君はそんなことを言うけど、本当にそうなのかな。

三人の顔は優さんのことをできるだけ傷つけたくないって思ってるように見えるけど。


「奈美、さん。私の、一部に」


優さんが一歩ずつ近づいてくる。

三人の作戦はまだ決まらない。


「とりあえず、三人で組み伏せよう。私たちは死んでるから、途中で力尽きるとか、そういうこともないだろうし」


三井君の意見に、大ちゃんも均ちゃんも首を縦に振り、優さんにつかみかかった。

優さんは三人をよけようとせず、さっきの三井君みたいに吹っ飛ばそうと腕を振った。

でも、その腕を三井君につかまれ、誰を殴ることもなかった。

大ちゃんはもう片方の腕を、均ちゃんは両足をつかんだ。

そして、息を合わせて優さんを仰向けに倒した。

三人とも優さんにしがみついてる。


「これでとりあえず、奈美ちゃんが食べられることはないかな」


「三井さん。冗談は存在だけにしてって言ったでしょ。気を抜いたらなみぃに襲いかかろうとするからね、藤田さんは」


「奈美、さん、奈゛美゛、さ゛ん゛」


「私の存在は冗談じゃないけど、たしかに気は抜かないほうがいいね」


優さんの様子がなんかおかしいけど、思いのほか、あっさりと優さんを止めることができた。

どうなっちゃうのか心配したけど、みんな生きてる。あ、でも、死んでる?もう、よくわかんない。


「で、どうしましょうか。奈美ちゃんには帰ってもらうとして、私たちは」


「え?帰るって、みんなを置いて私一人で帰るの?」


三井君の言葉にすっかり驚いて質問してしまう。


「なみぃは一人で帰るしかないでしょ。俺たちがついていくわけにもいかないし。だって、こんな姿で、こんなにおいだよ?」


均ちゃんのいうことももっともだ。もっともだけど、素直に聞けない。


「みんなを置いて、私だけ帰るなんてできないよ。それにずっと優さんのことを抑えておくんでしょ?ずっとしがみついとくつもり?」


「何かしら手立てはないか考えてはみるよ。ずっと野郎にしがみついてようとは思わないから。さすがに気持き悪いよ、自分が死んでるとはいえ。近いうちにどうにかするけど、それはなみぃが心配するようなことじゃない。だから、なみぃは安心して帰って」


何を言うの?均ちゃんは。私が心配するようなことじゃない?なんか腹が立ってきた。


「私が心配しちゃいけないっていうの?みんな私の友達なんだから、心配するのは当然でしょ?それなのに私は蚊帳の外。そもそも、こんなとこに呼び出したのは均ちゃんでしょ。それなのに、私には関係ないとか、そんなこと認めないから。呼び出されたからには、私もちゃんと関係するから。みんなの問題は私の問題で、私も含めたみんなの問題だから。ちゃんと解決しなきゃ安心なんてできるわけないじゃない」


私は言い切った。さっきまでビビってた私が言うのもなんだけど、今すぐにでも逃げ出したいなんて考えてた私が言うのもなんだけど、これが今の私の気持ち。

みんなが笑顔になる方法がきっとあるはず。


「……ごめん。とにかくなみぃには早いとこ、ここから逃げてほしかったから。実はまだ言ってないことがあるんだけど」


少し歯切れが悪く話していく均ちゃん。何?言ってないことって。


「あのさ、俺もなみぃのことがおいしそうに見えてるんだ。正直、俺もなみぃを食べたい」



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