#1
どうしてこんなことになっちゃったの?
何か悪いことでもしちゃったのかな?
私は大ちゃんの告白を聞きながらそんなことを考えてた。
はじまりはきっとあの日かな。
わけもわからず待ち合わせた、あの日。
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今日は友達の男の子三人と遊びに来てる。
といっても、まだ三人はここにはいない。
そもそも待ち合わせ場所がいつもと違ってちょっと離れた駅の前。
どうしてそんなところに?って聞いてもぜんぜん答えてくれない。
何があるの?って聞いてもぜんぜん答えてくれない。
つい押し切られちゃったけど、何があるんだろう。何をするんだろう。
そんなこと考えてたら三台のバイクが走ってきて、私の前で止まった。
一人は顔がよくわかんないけど、あとの二人の顔はよく知ってる。
「待った?なみぃ」
「えっ!?大ちゃん、どうしたの?」
知った顔は大ちゃんと均ちゃん。ということは、顔の見えないのは三井君?
「みんなで免許取ったんよ。なみぃには内緒で」
答えてくれるのは均ちゃん。わざわざ内緒にしなくてもいいのに。それとやっぱり顔の見えないのは三井君?
「じゃ、なみぃは俺の後ろに乗って」
「ちょっ、待てよ。何で大ちゃんの後ろなんだよ。なみぃは俺の後ろだろ?」
なんかケンカしだす大ちゃんと均ちゃん。
ちょっと待って、ちょっと待って。どうしてケンカになるの?
それに何?ツーリングなの?
何にも聞いてないから、全然ついていけないんだけど?
それにバイクに二人乗り?……ちょっと怖いなぁ。
なんて思ってると、顔の見えない人がバイクを降りて二人に近寄っていく。
「ホールドアップ!」
あ、ヤバい人だ。目を合わせないようにしよ。
ていうか、大ちゃんも均ちゃんも気にせずケンカを続けてる。
この扱いは、やっぱりあの人は三井君だね。
ヘルメットをとって顔がわかるとやっぱり三井君。
「ちょ、ちょ、ちょ。なんか反応してくださいよ。それとケンカなんてやめて。ここは二人の間をとって、奈美ちゃんは私の後ろってことで」
「いやいや何言ってるの三井さん」
「そうだよ、三井さん。冗談は顔だけにしといて」
「何!?均ちゃん、なんでいきなり悪口?」
あれ?三井君が止めてくれるのかと思ったんだけど、二人のケンカから三人のケンカになってる。なんで?
えっと、ここは私が止めないといけないよね。
何て言って止めたらいいんだろう。えっと、そうだ。
「わ、私のために争わないで!」
わっ!思わず声が大きくなっちゃった。
こんなこと、実際に言うなんて思いもしなかった。
わー、見られてる。まわりの皆さん、私を見てる。
三人も私を見てる。あ、ケンカは収まったのかな。
「……かわいい」
え?何、均ちゃん?
「うん。かわいい」
え?大ちゃんも?
「そんなかわいい奈美ちゃんはやっぱり私の後ろでしょ」
ちょっと三井君。せっかくケンカが収まったと思ったのに。
「ちょっと、三井さん。何言ってるんですか」
「そうだよ、三井さん。冗談は顔だけにしといてッて言ってるでしょ」
「だから、均ちゃん。何でさっきからそんな悪口を?」
あれ?やっぱりケンカは止まらないの?こんな恥ずかしい思いもしたのに……。
「こうなったら、バイクもあるんだし、チキンレースで決めよう」
え?チキンレース?
「よし。大ちゃんと三井さんには負けないからね」
「こっちのセリフです」
「三井さん、だから、冗談は顔だけに……」
「さっきからそればっかですね!」
ちょっと待って、ちょっと待って。
「あ、危なくない?やめよう」
「ごめん、奈美ちゃん。奈美ちゃんはゆっくり待ってて」
え?私の意見は?意思は?置いてけぼりなんだけど?
ああ、おあつらえ向きにブロック塀が。
その壁に向かって走っていくのね。やめて。お願い。
そんな私の思いはよそに、三人は壁に向かって走り出した。




