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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

リアル異世界転移 おれはどうなる?

作者: かものはし



 ただ舗装(ほそう)された歩道を出勤(しゅっきん)のために、駅に向かって小走りに走っている時だった。


 次の急行への乗車が時間的に(きび)しい。


 このままでは遅刻(ちこく)してしまう。


 その途端(とたん)、ぐらっと世界が()れた。


 まるで水の中に飛び込んだような感じで、視界が(ゆが)む。


 空間が()らいで飲み込まれた。


 ドサッと倒れ込むような感じで大地に()し、顔をあげるとそこは見たことも無い光景が・・・。


 空が紫色・・・青くない、紫色なのだ。


 大地は赤い。


 まるで血のような赤色。


 小石くらいしか見当たらない真っ赤な平野。


 そして見渡す限り、人影も人工物も見当たらない。


 ただの一面の紫の空と、どこまでも続く真っ赤な大地。


 これって・・・まさか・・・テンプレの異世界転移?


 本当にそんな事があるのか?


 場違いな背広(せびろ)革靴(かわぐつ)


 赤いホコリまみれ。


 うーん、小説の異世界転移って、休日の普段着の時に限定なのか?


 学生は学生服やセーラー服の時もあったと思うが、普通のサラリーマンの一週間で転移時に一番着ている確率が高い服って背広(せびろ)じゃね?


 実際時間で(はか)ったら、寝ている時間も多いよね。


 パジャマで異世界転移の話ってあったかな?


 「あー」と声を出してみる。


 ドナルドダックのような声にはなっていない。


 普通の声だ。


 ヘリウムが酸素の代わりをしているとか、それに類する現象はおそらく起きていない。


 一応、お約束で叫んでみる。


 「ステータスオープン」。


 シーン。


 何も起きない。


 「ファイアーボール」。


 シーン。


 何も起きない。


 「神様、説明をお願いします」。


 シーン。


 何も起きない。


 「チュートリアル、プリーズ」。


 シーン。


 何も起きない。

 

 その他、思いつく限りの事を一通りやってみたが。


 ああ、もう、何も起きないじゃん。


 さっきから(はい)が少し痛い。


 呼吸するたびに痛みが少しづつ増している気がする。


 それに・・・この太陽光にさらされている顔や手がヒリヒリする。


 このヒリヒリも増している気がする。


 神様の案内は?


 何かの高次元の存在の示唆(しさ)とかは?


 魔法は?


 耳には風の音だけが聞こえる。


 ああ、もう何もかもわからないが。


 もしこれがリアルな異世界転移だとしたら。


 しかも神様とか高次元の使者とか、その他の何者かの意志とか何も関係ないただの自然現象としての異世界転移とかに巻き込まれただけだとしたら。


 1分生存率ってどのくらいなのだろう?


 10分生存率ってどのくらいなのだろう?


 1時間生存率ってどのくらいなのだろう?


 1日生存率ってどのくらいなのだろう?


 10日間生存率ってどのくらいなのだろう?


 1か月生存率ってどのくらいなのだろう?


 1年生存率ってどのくらいなのだろう?


 5年生存率ってどのくらいなのだろう?


 10年生存率ってどのくらいなのだろう?


 50年生存率ってどのくらいなのだろう?


 例えば異世界転移先が金星の表面のような所だったら、大気は95%以上の二酸化炭素、気温は500度、気圧は92気圧(地球の地表の大気圧の92倍、地球の海の水深920メートルと同じ)空には硫酸の雲。


 即死(そくし)だろう。


 その場合の1分生存率は0%だろう。


 今はそれよりは持っている。


 だけど段々、(はい)皮膚(ひふ)が痛くなっていってる。


 ここの大気の成分は?


 呼吸は今のところ出来ている。


 酸素はあり、その酸素が少なすぎたり、多すぎたりもおそらくだがしていない。


 即死(そくし)レベルの有毒ガスも無いのだろう。


 だけど・・・その他の大気の成分に何が混じっている?


 紫外線量は?


 その他の宇宙線の放射量は?


 この世界の細菌は?


 ウイルスは?


 寄生虫は?


 外敵は?


 見渡す限り何も見えないが、もし万一、高等生物がいたとしてコミュニケーションは可能か?


 人型生命体はいるのか?


 いたとしても言葉は?


 文化形態は?


 おれを社会的一員として受け入れてくれる余地(よち)はあるのか?


 いや、そもそも水は?


 食料は?


 こんな赤い荒野の果てで得られるのか?


 ああ、何もかもがわからない。


 何もかもが謎だ。


 その時だった。


 視界の()てに何かが見えた。


 大きな岩?


 でも、近づいて来る気がする。


 (かばん)から専用布を出して、眼鏡(めがね)をふいて見直す。


 やっぱり上下に()れながら、近づいて来る気がする。


 段々、それは視界にしめる幅を増し、見えて来たそれは・・・。


 多分、スライム。


 両手で(かか)えられるくらいの大きさだと思うが、半透明(はんとうめい)のゼリー状のスライムらしき球体が()ねながら近づいて来る。


 まるで獲物(えもの)を見つけて捕食(ほしょく)のために()けつけて来るかのように。


 いや、そうと決めつけも出来ないし、あれがスライムだと確証を持って言えもしないが。


 だけど、もうすぐあれはここに来る。


 かなりの速度だ。


 走って逃げても追いつかれるだろう。


 それに、あの距離を速度を落とさずここまで()ねてこれる身体能力?に、今から全速で走って逃げて相手の息切れ?を待つ方法も現実的では無いだろう。


 それでもそうするべきなのかも知れないが、何だか(ほう)けてしまって、現実味がなく、突っ立ったままだ。


 ああ、近づいて来た。


 あれに対処(たいしょ)しないと。


 (まわ)りを見回しても、(ぼう)きれ一つ落ちていない。


 投げられるような大きさの岩もない。


 せいぜい小石だけ。


 両手に持った皮の(かばん)盾代(たてがわ)わりに(かま)える。


 やっとファンタジー世界っぽくなってきたけど。


 あれがスライムだとして、どの小説やどのゲームのスライムに一番近いのだ?


 一瞬(いっしゅん)で殺せる雑魚(ざこ)キャラ。


 一瞬(いっしゅん)でこちらが瞬殺(しゅんさつ)される普通のモンスター。


 仲間・・・にはなってくれそうもないけどなぁ・・・。


 ああ、もうすぐ答えが出るのだろうが。


 リアルな異世界転移って、こんなもん?


 ああ、おれはどうなる?


 ・・・・・。


 


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