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「そこで、今の状況から脱ぎ出たいなら」

「脱ぎ出たい」面白い表現をする人だなと思っていると、

「ははは。君の語彙力と表現力がかわいらしい少女並みなんだよ」

 と、うっすら嫌み含みのことを言われた気がする。が、よく分からなかったどうしようもない私の頭。


「でだ、とりあえず職が無ければ食べていけないよね」

「はい。それなんですけど、派遣で仕事を探してます。つい最近もふたつ応募しましたし」

「ああ。販売員のやつね」

「んがっ!!!」

「顔顔。あまり嬉しくない造りのお顔なんだから嘘でも綺麗な笑い方したほうがいいよ。今、果てしないよ」


 この占い師、ほとほと口が悪い。

 あんぐりと開いた口を閉じ、つばをごっくんして向かいに座っているやたら整っているうっすらムカつく男を睨んだ。


 くっそ。きっと言い返しても倍返しされるんだろうから心の中で罵倒してやる。


『ばーかばーか。はーげ。このインチキ占い師ぺてん師。勝手に人の心を読みやがって。くそ。顔がいいからってずけずけと言いやがってほんと……果てしなくむかつくわー!』


 ふっ。


 気がすんだ。


「で、気がすんだなら次いくけど。その応募した結果だけど……2つとも落ちてるね。書類ではじかれてる」

「そんなっ!」バンと音を立てて立ち上がった。だって、そんなはずない。洋服の販売員なら若いときバイトでやってた。勝手だって分かってる。


「20代半ばの人で決まってる」

「年齢で落とされたってことですか」

「違う違う。その子たちのほうがキャリアがあっただけの話だし、そもそも若い人向けのところだったじゃない」

「なおさら落ちるわー!」

「仕方ないでしょ。それが現実」


『現実なんざ知らんほうがいいこともある』


 それをこの占い師は目の前であからさまに言い放ったわけだ。

 ふたつ応募してふたつともダメだったなんて。でもちょっと待って。

 バッグに手を突っ込みスマホを探す。

 もしかしたら会社から連絡が来てるかもしれない。この占い師が分かってるならもう答えだって出てるはず。それにインチキかもしれないし。確認はしてみるものだ。


 メールのお知らせがある。

 中をチェックして顔が青くなった。


 不採用。今回はちょっと……といったお断りお決まりの文面で書かれた内容のメールが届いていた。派遣会社からの着信も数件あった。


 やっぱ、詐欺師でもなんでもない。

 ほんとに分かるんだこの人。


 これでまた振り出しに戻って派遣の登録から始めるのか。それとも前いた派遣先の違う仕事を紹介してもらおうか。

 とりあえずほんと、仕事はなんかしらしておかないとまずい。

 実家暮らしならまだしも私はとうの昔に家を出ている身。両親とは不仲だったので家を出てからというもの一回も帰っていない。頼れる兄弟もいない。


 スマホをバッグにしまい、ぬるくなってしまったコーヒーを一口飲み、近くに寄ってきていたコテツの頭を撫でる。


「というわけで、君、今日からここで働いていいよ」


 何が今日からここで働いていいよだよ。ん?


 働いていいよ。

 働いていいよって言った?


「なかなかよく理解できないんですが。ここでって、ここでですか!」

 ぐるっと自分の回りを見回した。

「だからそう言ったよね」

「でもなんでここで? 私なんにも見えないし感じないし霊能力なんてないし。それに占い師稼業なんてやったことないし!」

「んー、あのさ、なにいってんの?」



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