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 櫻井さんに腕を捕まれて半ば引きずられる格好となっていた私は自分の失態にほとほと嫌気を感じていた。こんなバカな人間がいていいものなのか。


 今まで起きていたことを冷静に深く分析して考えたらすぐに分かることだ。


『目に見えていることを鵜呑みにするんじゃない』


 出雲さんが言ってたっけ。そういえば出雲さんは私のことをバカだバカだと言っていたけれど、本当にバカだった。今更ながらに実感するとかもうほんと、アホの極み。だって、一番やっちゃいけないことをやらかしたんだから。アレをやらなければ私は犯人が誰かってことを突き止められたはずだ。そうしたら白子さんだって危ない目に合わなかったのに。全部私のせいだ。あの時……


「感傷に浸っている場合じゃないですよ。ほら、ここじゃないんですか? その白子さんが倒れてたとこって」


 櫻井さんの一言で現実に戻された。肩を叩かれた拍子に魂が体に戻った。と同時に、空気にカビと血と垢が混じったにおいが鼻について思わず顔をしかめた。


「っ。いない。さっきまでここに白子さん倒れていたのに。いなくなってる。甲乙さんは? あいつはどこ行ったの」

「そんな焦らなくても遠くには行けませんわあの足じゃ。白子さん引きずりながらだったらー、きっとまだこの辺にいますって。追いかけましょ」


 奥へ続く道はひとつしかない。そこには明らかに何かを引きずった跡が延びていた。これをたどって行けば白子さんのところへ行ける!


 反射的に駆け出していた。後ろで何かを言っている二人の声がするけれど、そんなこと気にしてなんかいられない。こっちは白子さんの命がかかってんだ。


☆ミ


「はい、ちょっと失礼するよ。って、なんて無用心なんだここは」


 誰もいない事務所に声が響いた。声の主はしばらく返答を待ってみるが、応答はない。


「誰もいないというのは失敬な話だな。この僕がこうして出向いてやっているというのに。そうかい、それでは僕は失礼して……」


 言うや否や、事務所を後にした男は事務所の扉に備え付けられている懐中電灯をつかみ、夜、夜中の動物園の中へと姿を消した。


「さあて、この暗闇で果たしてどんな動物が拝めるんだろうか。楽しみだ」


 真っ暗な動物園の中には懐中電灯の光だけが細く細く楽しむように延びていた。やがてその光は右や左に折れてふとその気配を消した。


 直後、動物の鳴き声が辺りに響き渡った。



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