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「いいから早く。じゃないと交代したらすぐここへ来てしまう。そうしたら私たちは殺される」
その言葉を聞いて鳥肌がたった。
言われた通りに後ろを向くと、甲乙さんも後ろを向き背中合わせになる。指先を器用に使ってなんなく紐をほどいてしまった。急いで自分の足に結ばれている紐をほどき、甲乙さんの腕の紐をほどいた。
甲乙さんが足の紐をほどいている間に私は素早く小屋の入り口に走り、外の様子に目を凝らした。事務所の入り口から数人の職員と思われる人が入っていった。交代要員だろうか。
「朝倉さん、こっちです」
壁に手をついて立ち上がって辛そうに頭をおさえている。
「怪我、大丈夫ですか?」
「このくらい大丈夫です。早くしないと動物が……」
「てか白子さんはどこなんですか! 案内してください」
「こっちです」
小走りに奥へ進みながら私は頭の中で計画を練った。まずは白子さんを救出する。それからあの二人をどうするかだ。向井さんは体格だけで考えると細いのでジャッキー仕込みの足払いからみぞおちに一発、からの、脳天蹴りへ。下からの攻めでノせるだろう。だが、あの熊みたいな櫻井さんは手強い。まだまだ未熟な私の技では倒せない。今まで観てきたジャッキーのビデオを頭の中でフル再生させて、何か使えるものはないかとフルサーチした。
事務所の方から笑い声が聞こえてきた。きっとあの二人と交代要員の人たちが楽しく話しているんだろう。
「朝倉さん、ここです!」
無言で甲乙さんのあとに着いていってたのでどこをどう通ったのか覚えてないけれど、指差した所には白子さんがぐったりとして倒れていた。
「白子さん!」
走りより抱き起こして呼びかけるけど、反応がない。でも温かい。息もある。
「睡眠薬で眠っているだけですから大丈夫です。それより、あの二人がここへ来る前に食い止められないでしょうか? 彼女はそこへ寝かせておいて。これを見てください!」
白子さんにばかり気がいっていて言われるまで全く気づかなかった。甲乙さんの後ろにいろいろな動物たちがケージに入れられて力なく横たわっている。まだ死んでいない。ただただ、痩せこけていた。
「私はこの子達を助けますから、あなたはあの二人を入り口のところでなんとか抑えてください! 時間を稼いで。その間になんとかしますから」
「分かった! そんなに時間は稼げないと思うけど、なんとかしてみる! 白子さんお願いします!」
言い終わるや否や、入り口に向けて走った。
甲乙さんじゃなかった。あの二人が黒幕だった。まんまと騙された。悔しさともどかしさと腹立たしさに私は腹の底から怒りが込み上げてきた。
抑えるのは無理だ。走りながら指を鳴らして殴る準備を整えた。あの二人がここへ入ってきたらまずは何も考えずにぶん殴る! その後のことはそれから考える!




