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「さきほど電話したら向井さんはようやく落ち着きを取り戻したそうです。櫻井さんと甲乙さんも今は事務所にいるそうですが、園長は用事で少しの間いなくなるとそう聞きました」

「なるほど。これからの予定は確か一人は事務所で待機。で、あとは暗くなった園内を見回るってことだよね。となると、その時に盗めるっちゃ盗める。もしかしたら二人一組で盗みに入っているのかもしれないわ。次の見回りは何時って?」

「夜中の一時だそうです。それが最後って言ってました」

「間に合うわね。その時間に一緒に回るわよ」

「えええ、夜ですよ。夜の動物園なんて怖くないですか? もしかして熊が逃げて歩いてたり、虎が彷徨ってたりしたら怖いです」

「ないでしょ。とにかく、二人一組で回るならそこに一緒に行かないと。今夜を逃したらとうぶん盗みはしないような気がする。ね。湖ちゃんお願いね。私は事務所にいるから」

「なんでですか! 白子さんの方がよく分かってるじゃないですか。それに暗闇でも見えるじゃないですかー。私暗闇じゃ見えないし、ナニか見えるとか気づくとかそんなことできないですし」

「そうなのよねえ。今回は幽霊なんかじゃないから湖ちゃんの力発揮できないのよね。あなたいるだけで霊が寄ってくるじゃない? でも今回は人間の心だからなあ。んー、でもあたしが行くとニオイで気づかれるでしょ? だから無理」

「……出雲さんはどこにいるんですか。ぜんぜん会わないんですけど、部屋にいます?」

「あたしじゃ不満なわけ?」

「いやそんなことは言ってないです」

「じゃ、つべこべ言うんじゃないわよ」と、一蹴された。


出雲さんがどこにいるのか、何をしているのか、そういったことは言わないのか言えないのか、とにかく、そのうち現れるってことだけは教えてくれた。


「とにかくさ、たいちゃんいなくてもあたしたちだけでできるってのを見せようじゃない。このくらいの問題朝飯まえでしょ。でしょ。でしょでしょ」

「……はい。そう思います」納得しておく。確かに、私だって一応は事務員て名目だけども雇われているんだ。何かしらで力にならないと。いる意味がないってもんだ。雇ってもらってるからには何かしらで力になりたい。


「そういえば事務所に残るのは甲乙さんみたいだそうですよ。なんかいつもそのパターンみたいで。甲乙さんは足が少し不自由なので走ったりできない分見回りにも行けないので、かわりに夜中の事務仕事は全般的に引き受けてるそうです」

「そうなんだ。甲乙さんはニワトリ担当だったよね。それなら多少力がなくともってことかしら。後の二人は確か熊だとかカバだか象だか担当の大きめの動物と猿担当よね? 熊相手なら力もあるしロバを動かすことだって簡単にできるわけね。犬だってちょろいもんでしょ。

 それに盗まれた猿担当の人だっているわけだし、やろうと思えば外回りでできるわけよね。事務所にいる甲乙さんは一人だから、そこを抜けた場合、電話が鳴っても出ることができないでしょ? それに来客があるかもしれない。業者とかのね。もしかしたら園長から連絡がくるかもしれないし。そこまで考えたらできないわよね」


 見回りは三回。

 閉園してすぐ。それから九時に一回。最後は一時だ。

 その時に盗まれた可能性が高い。園内は二人しかいないし事務所にも一人だけ。ほかの従業員は各々寮に戻っていて、朝も早くから朝ごはんの準備をしなければならない都合上早朝四時には起床する。なので夜中の一時にはみんな夢の中深くに落ちている時間帯だ。やるならその時間が最高だ。と、白子さんは目星をつけた。

 

 で、私は必然的に見回り要因となり、猫のにおいのする白子さんは事務所で甲乙さんの番をするという話にまとまった。


 東関道をかっとばし、にこにこ動物園に到着したのは午後十一時を半分回ったところ。酒々井のパーキングで軽いスナックを買って夜ご飯とし、千葉限定のピーナッツクッキーやポテチ、煎餅などを買い込んだ。

 朝までは結構な時間がある。一睡もしないで監視をしなければならないので食料を調達して挑む。もちろんブラックコーヒーも何本も買った。


 事務所の中には甲乙さん一人しかいなかった。

 ほかの人はどうしたものかと気をもめば、なんてことはない。外で洗い物をしているとのことだった。私たちが来ていることにあまり気を良くしていないのは向井さんだ。

 頭から信用していない。占い師ふぜいが何の解決もできないくせにでしゃばるなといったことがそのお顔に刻み込むように書いてある。


 見た目通り負けず嫌いの白子さんは向井さんを敵とみなし、本人に分からないように鋭い視線を指し続けている。放っておいたらこのまま彼のことを犯人扱いしそうな勢いだったので、私は今後のことをざっと夜勤の方々に説明し、協力をしてくれるように頭を下げた。


「本当に大丈夫ですか? あなたたちがここに居たところで犯人は捕まらないような気がしてならないんだけど。いや、女性だからってわけじゃあないんだけどね。ほら、刑事でもあるまいしさ、そんなことできるのかなって思って」


 早速牙をむいたのはやはり向井さんだ。その細い目におもいきり嫌味を宿して鼻で笑った。


「やめろ向井。警察に連絡できない理由があるからだろうが。内容は知らんけど。だったら園長が頭を下げて頼み込んで来て頂いてるこちらの方々にお願いするのが一番だろう。少なくとも俺らだけじゃ犯人なんて到底みつけられないよ」

 とは、櫻井さんだ。

「そう思います」

 控えめに一言ぽつりと便乗したのは甲乙さん。



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