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☆ミ
東関道は思いの外空いていた。成田空港方面へ向かう道のりの途中に覆面がいることが多いので気を付けてと昨日木立さんに聞いていたが、運転するのはこの私だ。法廷速度は守ります。そしてハンドルだって十時十分で握ってます。
『わ』ナンバーの白いプリウスの後部座席には白子さんが乗っていて、お菓子をぼりぼり食べながらミルクを飲んでいる。ちょっと食べちゃあ手を拭いたり顔を拭いたりとせわしない。そんなに気になるなら食べなきゃいいのに。もしくは食べ終わってから思う存分グルーミン……いや、綺麗にすればいいのに。と、心で思いながら、デリケートな問題かもしれないからあえて言わず、その辺に覆面がいないかにも気を付けた。
今日も占い師は不在だ。そのかわりの白子さんと共に向かっているわけだが、白子さんが一体何者なのか、いや、もう既に『ねこ』だってことは分かっているんどけど、なんで今人になっているのかすら不思議でならないが、私がここで働きだしてからの二回の仕事の中で、おばけという説明のつかないものや、しゃべる死体なんかも目の当たりにしているからか、白子さんが猫であろうとなんであろうとさして驚きもない。
ここまできたら占い師だって人であるかどうか怪しいところだ。
今日の白子さんは昨日と同じ真っ黒黒な格好だが、昨日と違ってパンツスタイルだ。足元はやはりハイヒールだった。ライダースのような恰好がとても似合っていた。私はといえば、スリムパンツに大きめのパーカー、スニーカーだ。
この女子力の違いはもうなんなんだろうか。
確かに私は地味だが、おしゃれは好きな方だ。性格だって、けっこう強気なほうだと思う。言いたいことは言う。しかしながら美人でもなければかわいくもない。いたってふつう。お笑い担当的な扱いをされるほうが多い人生だった。
白子さんのように見惚れるほどの美貌もなけりゃ、うっとり眺められる容姿も持ち合わせていない。
少しは白子さんの女子力を見習うべきなのだろうか、と、男の子みたいな格好をしている自分と白子さんを見比べてそう思ったりもした。
いや、私は私だ。これでいい。外見を変えてもなんの意味もない。そう思うことにした。
高速を降りてしばらく道なりに進むと『にこにこ動物園』この先左へ。といった大きい看板が建てられていて、いたるところににこにこ動物園の宣伝がなされていた。やはり千葉県民には人気のスポットだということが分かる。
山の中に入ったところで一枚木で作られている看板が視界に入った。
「白子さん、着きましたね。ここみたいです」
「高速降りたところからもう匂ってるから言わなくても分かるわ。猫の嗅覚ってすごいのよ」
「そうでしたか、それはすみません。白子さんて、猫なんですね」
いつ聞こうかタイミングをみていたところに自分からぺろっと行ってくれた白子さんは、「今更? おっそいわね相変わらず」となんとも答えようのない返答。
なんだ、そんなナイーブな問題でもなかったんだ。だったらもっと早く聞けばよかったと後悔するも、占い師の女じゃないってことにホッとして少しだけ肩の力が抜けた。
入り口を入ってすぐ左に案内所(事務所)と動物病院が併設されていた。
道なりに少し歩くと右側にレッサーパンダが愛嬌を振り撒いているのが見えてくる。さらにしばらく歩くとゴリラ・猿などの檻が、それを横に見ながら歩けば、ライオン・チーターなどの猛獣類がいる緑の芝生が目に入ってくる。
くるっと回るようにカーブをしていくと、ロバが口を左右に擦りながら草を食べていた。ロバゾーンの隣にはキリンやらシマウマやら、更に下ったところにモンキーゾーンがあった。
ロバゾーンとモンキーゾーンはさほど離れていなかった。とはいえ、盗人には離れていようがいまいがさして問題はないのかもしれない。
「白子さんそれ失礼だからやめたほうがいいですって」
私は私の後ろにへばりつくようにしてくっついてくるスタイル抜群の(今は)女性にこっそりと声をかけた。
白子さんは今、マスクで顔半分を覆いその上からタオルで顔をおさえていた。
「失礼もなにもないわよ。あたしはただ猫ってバレないようなしてるだけ」
「バレたらなんかまずいんですか?」
「大マズ」
「…………そ、そうなんですね。動物の世界はよく分からないんですが、とりあえずなんとか分かりましたはい」
「あたしがここにいるのがバレたら、きっと求愛される」
「……そういうところですか」力が抜けた。
納得はしていない。しかし彼女にだって言い分もある。あからさまに化け猫ときたらここにいる動物たちがどういう態度にでるか知れたものじゃない。怖い考え方はどんだけでもできるので、そこはあえて踏んづけないで避けて通ることにした。象ゾーンのうんこのように。地雷はあちこちに落ちている。




