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「ロバに関してはさあね、その人がロバ好きだったんじゃない?」


 小学生かと思うことを呑気に言う白子さんは既にこの話に興味が無くなっているようだ。飲み干したマグカップを自分から遠ざけて置いて、しきりに髪の毛を触っている。


 不安な気持ちを顔に浮かばせた木立さんは小さな声で私に、「オーナーはいつ戻られるのでしょうか」と耳打ちしたが、「すみません、それはちょっといまのところは……」とお茶を濁した。


 ここに占い師がいたらきっと木立さんの後ろ辺りに視線を向けて、独り言のようにぶつぶつ言うに決まってる。それからゲームでもするように答えに向けて真綿で犯人を絞めていくに違いない。が、当の本人は今ここにいない。奥の部屋にいるのかも定かじゃない。


 隣の白子さんはといえば、木立さんの後ろの方を細い目で睨んでいた。


 もしかして白子さんもまたナニかが分かるのか、見えるのか、感じるのかと次に来るであろうアクションをドキドキしながら見守ること数分、


「ねえ、あなたのところの水族館さ、」

「どどど動物園です」

「動物園にさ、動物のことを恨んでる奴とかいないのかしら? いじめてやろうとか思ってるの、いない?」

「うちにいるスタッフにそんな人はいないと思います。みんな動物が好きで働いていますし、うちに就職する前にも何回も何回も面接して人となりをみてきています。命を預かる現場ですのて、気楽な気持ちで働こうとする人は切り捨ててきていますから」


 けっこうな動物愛だ。そこまで徹底しているのならば変な気持ちを起こそうとする輩はいないように思われる。


 採用基準は動物のことをどんな分野でもいいから研究し、今後も動物と向き合ってデータを取り、未来の動物に向けてプラスになることをしていく人間を採用の最低ラインとして見ている。だから、動物に危害を加えるような人は取っていないと自信を持って言い、自分で納得するように頬の肉を揺らしながら力強く何度も頷いた。


「だったら……一度そちらに伺って様子を見させてもらうしかなさそうね。明日でいい?」


 似ていると思った。白子さんは占い師と性格が似ている。このごり押し的な感じも上から見下ろして物言いう角度も、そっくりだ。今だって、木立さんの予定なんててんで無視で、やっかいごとは早く取り除こうとばかりに明日でとか勝手なことを言っている。


「はい。明日で大丈夫です。こういうことは早い方がいいですから」


 マグカップを両手で回しながらもじもじし、瞬きの数が多くなる。


「いいんですか。今日の明日で都合つくんですか。動物園の都合とかもあるんじゃないですか?」


「いえいえそこのところはなんとでもなりますし、なんせ私は表には出ないので、明日来て頂けるのなら助かります。だってほら、ここのオーナーは見ただけで分かるって噂でしょう。それならもし従業員のうちの一人なら……そうは考えたくないですけど。早い方がいいと思いますし、もし内部の犯行だったら昼間から変な行動する人もいないと思いますから。その方がいいような気もします。すみません、でしゃばって」


 安堵の声と、これで原因が分かるという気持ちを全面に押し出して木立さんは何度も『宜しくお願いします』と頭を下げた。



 ここからにこにこ動物園までは車で行くことにたった今、白子さんの独断で決まった。木立さんにどのくらいかかるのかを聞いたら、明日は平日の昼間なのでそんなに混んではいないだろうから二時間もみてくれたら着くだろうという情報をもらった。

 それならと、明日の正午に伺う約束を立て、今日のところは一端終わりということで、話はまとまった。


 

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