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のどを触らせてくれて、目を細めてごろごろ音を立てている。


「うわ、親子でそっくりでかわいー。萌の極み乙女。笑えるーううう」

「うん。笑えるのは君のほうだね朝倉さん」


 突如呼ばれる自分の名前にドキリとし、声のした方を見たらいつの間にかそこには人が立っていて、太陽を背中に背負いながら見下ろしていた。


 ダメージデニムに白いTシャツにスニーカーというラフな格好の男が一人。そこそこ筋肉質で某アイドルグループに所属してそうないでたちだった。でもテゴシユーヤには似つかない。追い付かない。はい、無理却下。


 私の知り合いにこんな人いない。


「まさかノリコがそんなすぐになつくなんてな。初めてかもしれない」

「ノリコって誰ですか? ねこ? あの私はノリコっていう名前じゃなく」

「ああ、知ってるよ。朝倉湖さん33歳独身。仕事は辞めたばかりで無職。てかクビになった。でしょ」

「!!!!!!!! 個人情報の漏洩!!!!!!」

「はははは。ちょっと勘弁してよ。君が俺を探してたんでしょうよ」


 君が俺を探してたんでしょ?


 ってことは、

 ってことは、

 ってことはだ、


「まさかの占い師さんてもしかして」

「俺」

「見つかるの早っ!」

「はは。時間て貴重だからね、さっさと出てきてあげたんだから喜びたまえ」


 開いた口が塞がらない。

 だって、思っていた占い師とは真逆に位置していたから。

 占い師さんてこう神秘的でベールとか被ってて厳かな感じなんじゃないの?


 目の前にいる私が探していた占い師(と名乗る)この男の人は肩に子猫乗せて腕に母猫抱っこして、


「こっちだから。着いてきて」


 一言そう言ってさっさと先を歩いている。ふっつーのお兄ちゃんだ。

 黒猫はどこにいるの? あれだけ探していた黒猫は、一体どこ?



 不思議なことに、地下へと続く小道へたどり着くまでには誰にも会わなかった。そして、目の前には地下へ続く階段がどういうわけか存在していた。さきほどもこの道を通ったが、その時にはこんなところは無かったように思う。

 階段は薄暗く細く狭く、まさしく獣道。

 猫にしか見つけられないだろうといった雰囲気だったけれど、ただひたすらに占い師の背中を追うしかなかった。


 薄暗い中の一点の明かり的な要素のTシャツは今では有難く感じた。

 階段を降りる中で徐々に辺りがオレンジ色のライトで照らし出され、目も慣れてきたころには目の前に巨大な鉄の扉が現れた。


 まさかのこの中で拷問でもされるんじゃなかろうか。

 もしかしたら監禁されたり……売り飛ばされたりしたらどうしよう。

 こんな新宿の路地裏の地下、しかもこんなに重そうな鉄の扉だったら音漏れも気にならないハイクオリティーな音吸システムな構造でもちろん臭いだってブラックホール的吸収力・吸引力により一瞬で異次元に飛ばされるんだろう。


 確率ほぼほぼ98パーで見つからない。


 ごくりと唾を飲んだ。

 静かに後ろを振り向き帰ろうと……


「雨野さんもたまに来るんだよここ。君が入り浸っているとこのマスター。知ってるよね。俺の昔からの知り合いでね。たまーに一緒に飲んだりするの」

「マスターのこと言ってるんですか? だったら雨野じゃなくて夜野だと思うんですけど」

「だから今そう言ったでしょ。君はそこに遊びにきた女の子の話を聞いて僕を探したんだろうけど、雨野さんも知ってるはずだよ、その話」

「よるの……」

「名前なんてなんでもいいよね、話の内容で分かれば」



 まじか。なんなんだろこの人。ちょっとなんか変な気がする。

 マスターも知ってるならなんであの時話に加わってくれなかったんだろう。そういや含み笑いしてたっけね。にやつきながら『へえ。面白そうな話ですね』なんてしらきってやがった。

 ぜーったい面白がってたんだ。私が見つけられるかどうか、見てやろうってところか。

 くそ。

「まあ、そんなもんだろね。彼、あんな感じだけど鋭いからね」

「ちょちょちょちょ、考えてることも分かるんですか」

「あれ、読まれたくなかった? そしたら俺の前では何も考えない方がいいよ。丸裸になるから。人の考えていることも読める占い師なんで」



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