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「幽霊の正体見たり枯れ尾花ってところかな、君たち二人の言うところは。ま、そんなところだよね」

「はい、そんなところです。それに、出雲さん、話がずれてますよ」

「いや、何もずれてないよ。これでいい。それで話を続けると、高宮さんが最後に彼氏と話したのは電話。しかもすごいノイズだったんだよね。それ以来会ってない。今も連絡つかないんだよね?」

「はい、ぜんぜんまったく連絡がつきません」

「それなら、ちょっと君の電話貸してくれるかな」

「いいですけど」


 高宮さんがかばんの中に手を入れて電話を出そうとしているのを横目に占い師はモカを一口口に入れ、


「うん、おいしいね」


 と独り言を言った。

 褒められたらそれはそれは嬉しいけれども、これ、結局スティックコーヒーだし。サンドイッチを褒められたい気持ちが強い自分に驚いた。


「すみませんあの、電話、忘れてきてしまったみたいで」

「そうなんだ。じゃ、取りに帰ろうか。彼は君からの電話じゃなきゃ出ないと思うんだけど」

「そこまでわかってるなら居場所を教えてくださいよ」


 今までぐっとおさえてきたものが吐き出しそうになっている。


「そのためには君の問題を解決してからじゃないとダメなんだよね。今のままじゃ無理。見つけられない。見つけたとしても入れない」


 占い師のやりとりをじっと聞いて何が言いたいのかを探った。きっと彼の中では答えは出てるんだ。もう最後までどうなってるのか分かってる。そこまでたどり着くための道を開こうとしているのかもしれない。もしかしたらこの性格の悪さで私たちを混乱させて楽しんでいるのかもしれない。

 でもぜんぜん私には何がなんだかわからない。


『予知してよ』


 って声が聞こえてきそうだけど、あえて考えないことにした。


「よし、それじゃあ早速君の家に行ってみようか」


 言い切る前に席を立ち上がる占い師に続き、私も急いで腰を上げて財布と鍵を取りに台所へ向かう。

 前回の事件で、占い師が家を出るときは私も一緒に行くことと、その時には財布、それから入り口の鍵をかけることを勉強した。


「高宮さんの家に行って電話を取ってこよう。この間に彼から連絡がきているかもしれないよ」

「……分かりました」


 なぜか乗り気じゃない高宮さんを半ば強引に誘導する占い師は奇妙なほど真面目な顔をしていた。

 入るなと言われている占い師の部屋の前から動かないノリコと母猫は相変わらずじっと眺めているだけで近づいてこない。


「朝倉君、ボーっとしてないでほら、行くよ。突っ立っててもなんの解決にもならないからね」

「はい、すみませんただいま」


 軽い暴言は受け流し、急いで用意をして鍵を持ち入口へ走った。しかしなんなんだろう。この人はその時の気分で私を『朝倉さん』と呼んだり『朝倉君』と呼んだりする。何か違いがあるのだろうか。と、そうだ、とりあえず余計なことは考えるのをやめよう。



☆ミ


 高宮さんの自宅の玄関先に着いたとき、何かがおかしいと感じた。周りの空気なのか、この土地のせいなのかはまだ分からないけれど、第六感が『おかしい』と感じさせていた。

 外から見ても分かる。家の中は暗い。というよりもカーテンもないし人が住んでいる気配も感じられなかった。

 家が生きていない。空き家だ。それも手入れもされていない状態のまま、誰も踏み入っていない感がひしひしとしている。

 しんと静まりかえっていて、もうずっと人の出入りのない気配がひしひしと感じ取れる。でも、高宮さんがここに来たってことは、ここに住んでいるということだ。


「もしかしたら……留守なんでしょうか」


 外から家の中を覗き込みながら一番後ろに立っている高宮さんに問うたが彼女からは何の返事もない。


「高宮さん?」


 振り返り彼女を見たが、その顔に生気はなかった。


「…………なんです」

「はい? 今なんて?」

「いつも……こうなんです」

「いつもこう? ってえーとどういうことなんでしょうか」

「……私も知らないうちに実家はこうなっていて、入れないんです。何回も入ろうとしたけどそのたびにどこかに飛ばされる」

「入れない? 飛ばされる? だってここに住んでらっしゃるんですよね?」

「そうです。でも、いつもここで終わるんです。ここまで帰ってきて、この家に入ろうと門に触れた瞬間、そのあとの記憶が無くなるんです。それで、気付いたらまたここに立っていて、ここからまた一歩も動けない状態が続くんです」

「動けないって、記憶がないって、いったいどういうことなんですか? え? え? だってご自分の家ですよね? 入れないっていったい」


 一人焦る私に、


「そうですよね、おかしいんです。でも怖くてこれ以上中に入ることができないんです。この先に、私一人じゃどうしても進めない」

「ご家族は?」

「私一人じゃだめだ。ダレカがいないと」


 何を言っているのか意味が分からない。

 ここは彼女の自宅なわけで、この家の中に置き忘れたという携帯電話があるはずで、それを取りに来たのに中に入れないなんてふざけてる。どう考えてもおかしい。


 もう一度背のびをして家の中を覗きこんだ。

 やはり家の中に人の気配は感じられなかった。



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