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高校生の体の悩み、全力で受け止めます

『高校生の体の悩み、全力で受け止めます』


死体に霊に、慣れて頂きましょう。


 おクソ占い師がウキウキ気分で跳ね飛んでます。

理由はただの一つ。


「今日は高校生の来客があるから、オレンジジュースでも用意しておいてね」

「……高校生だってコーヒーの一つも飲みますよ」

「そんなことは知ってるんだよ、タコ助。コーヒー一杯じゃすぐに帰っちゃうじゃないか」

「……もうほんとアレですね(クソですね)」

「朝倉君、僕、全部分かっちゃうって言ってるよね」

「わざとです!」

 太陽が東からのぼるように徐々に明るい笑顔が見え始めたのは、いつも通りに仕事場の重厚なドアを押し開けた瞬間だった。


「やあ、おはよう朝倉さん、元気にしてたかな?」


 朝倉さんか。今日は『~さん』モードの気分なんだな。

 この占い師、自称出雲大社は自分の気分によって自分や人の呼称、人に対する態度が変わるという大人としていかがなものかと思われる性格と人格をしている。

 が、特殊能力の持ち主で、悩みのある人の奥底の悩みをその人の顔を見ただけで見抜いてしまうといった何も悩みのない人にとっては迷惑な能力を持ち合わせている。

 しかも、人の心の中まで読んでしまうというのだから、極まりなく大変遺憾に思う。


 特に、私はこのカフェで働くことを新しい仕事としているが、今のところ、

 猫の世話、

 コーヒーを淹れる、

 仕事場を掃除する。

 これのみだ。

 そして、どうにも腑に落ちない私はこの占い師を名前で呼ぶことができないでいた。


『占い師さん』


 そう呼ぶことにしている。

 ふとした瞬間に名前で呼んでしまううかつな行動を取ることもあったが、どうにもこうにも、

 腑に落ちないことが盛りだくさんで。

 たまに思い出したようにこの占い師は不機嫌そうな顔をして、『出雲だ』と言うが、聞き流すことに決めている。


 客人には『お告げカフェ』として通っていて、見つけられる人にしか見つけられない場所という意味で陰で人気になっているが占い師本人曰く、『波長の問題だよね、そんなもん』だそうだ。

 なんせ、頭の回転が速く、目の前の人を見ただけで全てが分かってしまうんだから、相談者の悩みをたらたら聞くといった面倒なことを嫌がる。


 そしてこの新宿地下の穴倉、皆が『お告げカフェ』という場所を占い師は『仕事場』と呼んでいる。


 入り口、つまりは玄関にあたるところは『入り口』と呼び、決して玄関とは呼ばない。

 理由は、玄関とはつまり仏教用語であり、『玄』は奥の深い悟りの境地に入ること、『関』は入り口のことであり、つまりは『仏道』への道を指す言葉だからだそうだ。

 よって、私もここを入り口と呼ぶことにした。

 入り口を入るとだだっ広いワンルームの広い部屋になっている。そこが仕事場で、部屋一面真っ白いカーテンだか布だかで覆われていて真ん中に丸いテーブル(円卓)と椅子が置かれている。

 その奥にキッチンがあり、そこが今のところの私の仕事場だ。


 しかしながら一つ心にひっかかってもやっとしているところがある。

 この占い師、時折独り言っていうか見えない誰かと話している風な態度をとることがある。

 疑問に思っていることなんだけど、いつか聞こうと思っていてついつい忘れてしまう。


「今日は午後に来客があるから、オレンジジュースを用意しておいてくれたまえ」

「オレンジジュースですか? カフェなのに? ああ、そうか、コーヒーが飲めない人もいますもんね。そうかそうか、そうでした」

「高校生の来客だから」

「高校生でもコーヒーくらい飲みますよね」

「君の頭は穴だらけのスポンジかな? もしくは穴の開いたれんこんさんかな? コーヒー一杯じゃすぐに帰っちゃうじゃないか」

「……ぇー……そこですか」


 エロ占い師が。


 ますますこの占い師を見る目を変えることにして、一刻も早く次の仕事を見つけて辞めようかってことがうっすら頭に浮かんだ。


 約束の時間の十分前に入り口のドアが開かれ、外の空気が部屋の中へ入ってきた。

 丁度その時私と占い師はキッチンで座って昼ご飯を食べているところだった。

 なぜ一緒に食べているのかというと、このきまぐれ占い師の、

『食事は一緒にしたほうがおいしいじゃないか。特に君の料理は一人じゃ堪えられないでしょ』

 といったいつも通りのむかつくひとことによる。

 もうこれはこの人の挨拶だと思って普通にやりすごすことに決めた。じゃないとストレスが溜まって仕方がないから。

 昼は昨日と中身の違うサンドイッチにした。

 昨日はレタスとトマトのシンプルなものにしたが今日は照り焼きチキンサンドにしてやった。

 昨日べちゃってる発言をしたんだから、見返してやろうと思ったわけだ。

 照り焼きチキンもたいがいべちゃってるけど。

 一口口にしたあとで、


「俺、チキンてあんまりなんだよね」


 だったら早く言え! と思ったが昨日の今日でこの占い師の好みが分かるはずもない。


「すみませんね、以後気を付けます」


 ぎりぎりする手をおさえて謝るが、なんてことない、全部ぺろっと食べてしまっている。


 心を無理矢理落ち着かせたところで、外の空気の気配がして二人してキッチンから仕事場に顔を覗かせた。

「あのう、すみません。ええと、黒猫に着いてきたらここにたどり着いたんですが」


 顔を覗かせたのは占い師の言った通り高校生だった。しかも女子高生。

 あれ、でもこの子、なんかおかしい。

 とはいえだからか、今日の占い師はいつもよりきれい目な格好をして髪型もどことなく某アイドルを意識している風だった。

 まったくなんていういやらしい占い師だ。


「やあやあどうぞどうぞよくいらっしゃいました。ささ、こちらへ」


 真夏の太陽さながらのかんかん照り決め笑顔で招き入れる占い師は、朝倉さん、飲み物よろしくね、と優しさ百倍の声色で言う。


「どうも。事務の朝倉です。こんにちは」


 ちょこんと顔を出してこの前覚えた私の役職を惜しみ無く披露し挨拶をした。

 じゃないとびっくりさせてしまうから。それじゃなくても地下のこんな場所だ。それが若い女の子だったらなおさら怖がるだろう。こんなやくざな占い師と二人きりだとわかったら更に。


「あ、こんにちはあ」


 ほっとした顔を見て安心した。

 だいじょぶ。占い師がなんかしたら私がぶっ飛ばすからね。と、一度笑んで頷き、占い師を横目にキッチンへ消えた。


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