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『トゥードゥーリスト』


1、猫のトイレットを綺麗にしてね。

2、猫にカンカンをあげてね。

3、裏庭のドアを開けて猫を散歩させてね。

4、コーヒーのストックを確認してね。

5、仕事場の掃除を徹底してね。

6、俺の朝ごはんと昼ごはんもよろしくね。


「はっ!?」


 百歩譲って5番まではやるよ。でも最後の6番のやつ、なんなのこれ。これじゃほんとに召し使いじゃないか。食事の支度までやるなんてまったく聞いてない。


「これまじで言ってるのー!!!」

 と、リストを目の前に掲げ大声になれば、奥の部屋から、

「ねえちょっとさ、君の声大きくて寝られないから。独り言なら音量1くらいでやってくれない? すごい迷惑だよ」

 と怒鳴られる。


「すみ……ません」

 ギリギリしながらも謝るけど、こんなのほんとにやってられん。

 こうなったら絶対に新しい仕事を早く見付けて辞めてやる。

 こうなりゃ日雇いでもなんでもいいよ。ちゃんと仕事らしい仕事を見付けてやる。こんな穴蔵からおさらばしてやる!

 やりたくてしているわけじゃないし。


 鼻息荒く猫トイレのスコップを握りしめた。どこから沸いて出たのか、いつの間にか猫らがねっころがっていた。

 不思議そうに見上げるノリコを見るとホニャっとする。そう、猫に悪気はない。

 あのいんちき占い師には悪気がある。

 猫はかわいい。いんちき占い師はかわいくない。


 コテツにノリコに母猫にかんかん(猫缶)をあげ、言われた通りに裏庭から散歩に出した。そのあとにきっちりかっちり猫トイレを掃除して綺麗に洗うとなぜか心まで洗われた気分になった。


それから最後に、やりたくはないけど占い師の朝食をつくりにかかる。

 冷蔵庫を開け、一通りの物が入っているのを確認し、サンドイッチでいいか。と、適当に作ることにした。


 これも仕事だと割り切ってリストの6に取り掛かったところで空気の流れが変わったことに気づき、ふと占い師の仕事場へ顔を覗かせると、ドアが薄く開いている。

 その向こうに誰かがいるのが気配で分かった。


「ええと、あの、どちらさまでしょうか」

 サンドイッチを作っていた手を休めて足早に仕事場へ向かうと、

「す……すみません。あの……ここって……」

 か細い声で話すドアの向こうにいる人は顔を覗かせるわけでもなく、入ってくるわけでもない。

「ええと、あの……ここって」

 ドアを内側に引いて開けると、少し離れたところにこじんまりと立っている女性が一人。

 白地に緑のチェック柄の大きめのワンピースに白いカーディガン。

 クリーム色の靴に肩までの栗色の髪の毛。おどおどした雰囲気。


 そうだ、私はここで働いていて、コーヒー係も兼任しているんだった。と思い、

「何かごようですか?」と聞いた。

 ひとまず何のためにここに来たのか確認しなければならないと思ったからだ。

「こ、ここは例の占いの館なんでしょうか。あの、黒猫を追ってここへ来たんですけど、なんだかどうしていいのか分からなくて」


 ああ、なるほど。


『黒猫を追って来ればたどり着ける場所』


 この人は黒猫に会ったんだ。で、その猫の後を追って来たらここへたどり着いたわけだ。ってことは、お客様で間違いないだろう。


「はい。そうです、そうです。ここで間違いないですよ。どうぞこちらへ」


 中へ招き入れるのにドアを大きく開けたが、「あなたは?」と不思議がられ、中に入ろうとしない。逆に一歩後ずさられてしまった。


「私は朝倉といいます。ここでバイ……ええと、働いているものです。今……あー、その、なんだ、せ、先生? をお呼びしますので、どうぞお入りください」


 占い師のことを『占い師』と言うべきか、『出雲さん』と言うべきか迷った結果、この場合一番しっくりくるのは『先生』だろうという答えに仕上がり、咄嗟に口から言葉が漏れていた。


 女性はようやくうっすら笑い、「三菱と申します。どうぞよろしくお願いします」と名乗った。

 どうしていいのか分からず、中に入ったところで立ちすくむ三菱さんに、


「入り口入ってすぐこんなただだっ広い部屋が現れたら困惑しますよね。でもご安心くださいね。ここには三菱さんと先生と私しかおりません」


「ここが、占いのお部屋なんでしょうか」


 再度の確認てことはまだ信じていないってことだ。占いのお部屋かどうかはぶっちゃけ分からない。占い師は『お告げカフェ』と呼んでいた。


「まあ、そんな感じでしょうかね」


 曖昧に濁すと、


「あ、そうでした。あれですね、お告げカフェでした。聞きなれなくてつい。すみません」


「いえいえ、いいんですよ、謝らないでください。私も初めはそう思ってましたから。呼び方なんてなんでもいいんですよね。それでは少しお待ちください」


 少し緊張がほぐれたのか、ゆっくりと一歩踏み出して真ん中のテーブルについた。



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