八十九話
「食堂行って夜食にするわよ!」
「わーい、ご飯であります!」
広間を抜けると、ロココ調の家具が所狭しとある大部屋に出た。
「本当に貴族の部屋みたいでありますなぁ…」
「別に。母の趣味よ…」
「そいえば親御さんはいるのでありますか?」
「両親は大体病院で夜勤よ。この家には私と田端さんしかいないわ」
ドクターマリの両親は毎日忙しそうであった。
色々な部屋を通ったり、長い廊下を通って、やっと食堂に着いた。
小さい部屋で普通のテーブルと台所があるだけの質素な部屋だった。
「あれ?この部屋は庶民的でありますなぁ」
「大食堂あるけど、大きすぎて落ち着かないのよ…」
お金持ちは色々悩みがあるらしい。
「お夜食のご用意してますので、お座りになってお待ちください」
田端さんが台所に立ち、ご飯の用意をしてくれている。
「それじゃぁ、失礼して座って待ってるであります…」
晃穂とドクターマリは椅子に座った。
「ところでドクターマリは本名はなんていうのでありますか?」
「あれ?知らないんだっけ?西園寺真理よ。まぁドクターマリって呼んでくれていいわよ」
「マリさんでもいいでありますか?」
「天才美女ドクターマリよ!」
どうしてもドクターマリと呼ばれたいらしい。正直めんどくさい。
「お嬢様のお好きな料理作りましたよ…」
田端さんが料理を運んで来た。
見ると、トマトソーススパゲッティだった。
これまた庶民的な料理だった。
「お嬢様は昔からこのスパゲッティが大好きなんですよ」
「恥ずかしいから言わないで!」
ドクターマリは案外庶民的なお嬢様だった。
「まぁ、いいから食べるわよ。いただきます」
「いただきますであります」
食べて見ると、すごく美味しい。オシャレなパスタではなく、家庭的な一般的なスパゲッティだ。
だからこそ、お金持ちのお嬢様であるドクターマリは、このスパゲッティが好きなのだろう…。
「口、トマトソースまみれよ」
そう言ってドクターマリは、晃穂の口をナプキンで拭いてくれた。
「ありがとうであります!ドクターマリも口についてるでありますよ」
晃穂も、ドクターマリの口元を拭いてあげた。
「ば、バカ!同じナプキンで拭いたら、間接キスになってしまうじゃない!」
ドクターマリは、顔を真っ赤にしている。
ドクターマリは、意外とウブなのだろうか?
「あはは。ドクターマリ、顔が真っ赤であります。トマトみたいであります!」
「う、うるさい!後で覚えてなさいよ!」
調子に乗った晃穂だが、ドクターマリに怒られてしまった。




