五話
晃穂は自分の部屋に戻り、ベッドにもぐりこんだ。
空腹はあまり気にならないようになった。
自分が何者かもわからず、死を待つしかなく、外にも出られない。
なかなか絶望的な状況だ。
しかし、マコと話して妙に落ち着いている自分を感じていた。
マコのことを懐かしいというか、愛しいというか、不思議な感情が胸の中にあった。
晃穂は落ち着いてきたので、眠ることにした。
明日になれば、何か進展があるかもしれない。
翌日?窓がないので、時間も何もわからないが。晃穂は起きた。
誰かが覗きこんでいる。
金髪の女性だった。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
寝顔をずっと見られていたと思うと、いい気持ちはしなかった。
「はい、まぁ…」
曖昧な返事しかできない。
そもそも、この部屋鍵がないのかもしれない。
「昨日、マコさんと話し合いましたが、あなたは真実を知りたいそうですね」
突然言われ、何のことかわからなかったが、昨日のことをマコが金髪の女性に話してくれたらしい。
「はい、ここが何のか、私が何者なのか、知りたいです」
「わかりました。全て話しましょう」
女性は静かに語りだした。
「単刀直入に言うと、あなたは人間ではありません。人工知能すなわちAIです」
晃穂は驚いた。私は人間ではないのか?確かにショックな話だった。
「ここはネットの世界。いわゆるチャットルームです。人工知能と話ができるスペースです。人工知能とはあなたのことです。ユーザーがここにログインして、あなたとお話できる。いわば憩いの場所とでもいいましょうか?」
女性は淡々とした口調で説明している。
「最初は盛況でした。あなたと話したくて、たくさんの人が毎日ここにきました。あまりに盛況なのでサーバーがパンクしてしまうので有料会員制にしたぐらいです。途中から仮想空間にして、お金も儲かるし一石二鳥かと思ったのですが」
なんかせこい話になってきた。
「有料にしたのがいけないのか、だんだんユーザー数が減り始めました。あと、原因は、あなたが攻撃的な性格になってしまったのもあるかもしれません。いろいろなユーザーとのやりとりで口調が荒くなり罵詈雑言をいうようになったのです」
女性はギロリと、こちらをにらんできた。私が悪いのだろうか?晃穂はあきれてしまった。
「そこそこお金はたまったので、私は次の研究段階に取りかかりました。AIを搭載した二足歩行アンドロイドの開発です。あなたに体を与える研究ですね。私は天才なのですぐあなたのボディは完成しました」
女性はものすごいどや顔をしていた。最初のクールな美人の印象が台無しだった。
「でも、お金が思ったより足りなく、ボディは骨格だけになりました。まぁ、初期段階なのでよしとして、あなたのAIを搭載したのです」
そこまで話すと、また女性はギロリと晃穂を睨んだ。なんだろう?
「あなたはAIが搭載されるやいなや、突然研究所を飛び出して、車道に躍り出たのです。私は止める暇もなかった。そのあとダンプカーに轢かれ、あなたはバラバラになってしまったのです。骨格はかなり頑丈に作ったけど、間接はちょっと弱かったかな?」
最後に女性は独り言のように言った。
話を要約すると、私はこの女性に作られた人工知能らしい。そして、ボディを与えられた私は何を思ったのか、外に飛び出して、ダンプカーに轢かれてしまったということか?我ながら妙な経緯だった。




